MFT#011 御在所トマト

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一番好きな野菜はトマトである。

 

僕は野菜の中でダントツでトマトが好きだ。それは幼い頃からずっとそうで、僕自身は記憶にはないのだが、母親曰く、出先で泣き出した時にはミニトマトを持たせることで泣きやむ子どもだったらしい。

好きになった理由も特に記憶にない。物心つく前からずっと好きだったし、誕生日にトマトを大量にもらって小躍りしたことも幾度となくある。

 

ちなみに僕は生のトマトが大好きな一方で、加熱したトマトはあまり好みではない。ケチャップやトマトソースも好きではないし、焼きトマトに至ってはほぼゲロだと思いながら食べている。しかし、生のトマトであれば三食それだけでも特に困らないほどに好きである。

また、ミニトマトもあまり好みではない。多くのミニトマトは酸味や甘味のバランスが極端で、大玉のトマトが持つふくよかなバランス感に欠ける。

 

僕がトマトにおいてとても重要視していることが二つある。一つは、畑からもぎたてのような強い青臭い香りが残っていること、そしてもう一つは、皮の厚みが適切であることである。トマトは熟するほどに分厚い皮が柔らかく、薄くなり、そして甘さが増していく。余計な甘さが。トマトにとって最も重要なのはその皮の厚さの中の果汁とのバランス感であり、これが絶妙であったトマトの歯切れの良さは筆舌に尽くし難い。そして、このバランスが完璧に近いほどに、甘さと酸味のバランスもちょうど良くなる。

 

さて、僕がその存在を知ってからかれこれ10年以上愛食しているトマトがある。それが「御在所トマト」だ。僕のド地元三重県三重郡菰野町の観光名所、御在所の名を冠するこのトマトは、農家、井上昇氏によって生産されているブランドトマトである。甘み、酸味、果汁との皮の厚さの関係性、もぎたての青臭い香り、その全てが120点に近い完璧なトマトだ。地元にいた頃は時たま食卓に登ったが地元を離れてからは当然常食することは叶わず、しかし、これに代替するトマトは未だ見つけられていないため、定期的に母親を通じて箱で送ってもらっている。

本当に美味しいトマトなので、いつか必ず生産者井上昇氏のもとを訪ね、感謝の言葉を送りたいと思っている。本当に作っていてくれてありがとう、という気持ちがかじるたびに溢れる。

 

このような最高のコンディションのトマトは丸かじりするのが一番である。皮が弾けて、サクリとした果肉の歯切れの良さを喜び、果汁の瑞々しさに頬がほころぶ、この贅沢を味わうには丸ままかじるほかない。トマトはくし切りにされがちだが、こうすると皮と果汁とのバランス感が少し崩れてしまう。とにかく丸ままかじるのが一番だ。

 

今日もこのあと食べようと思っている。今からよだれが溢れてくる。死ぬまで食べ続けたい。