2023年を振り返る(良かった漫画10選)
2022年に引き続き、2023年も良かった漫画を10冊選ぼうと思います。 昨年は2022年に1巻が発売された漫画から選んだんですが、今年はそういうの関係なく、2023年に買った漫画で良かったものを挙げようと思います。暇つぶしにでもどうぞ。 もう2024年に入ってしまいましたが、今年、と表記のあるものは2023年を指してると思ってください。めんどくさいので。
2023年の漫画10選
砂の都
今年の漫画史を語るにおいて外すことはまず不可能でしょう。叙情的で肩の力の抜けた線から描かれる、空想世界の人間模様。僕が人生において好きな漫画家を5人挙げろと言われたら必ず挙げる、町田洋の新作です。待望にも程がある、手に取った時少し泣きました。稀代の名作、夜とコンクリートから10年くらい経ってますからね、もはや刊行されたことが奇跡に近い。
SNSで交流のある方が、市川春子、町田洋あたりをひっくるめて「鉱物系」と呼んでいる、というのをみてとてもしっくりきました。いい表現ですね。 夜中3時に、街並みを眺めながらビルの屋上で冷たい空気を吸った時みたいな気持ちにさせてくれる漫画です。 なんというか説明できないんですよね、好きすぎて。とにかく読んでみてください、よろしくお願いします。2023年のベストです。
商店街のあゆみ
今やサブカル漫画としてかなり地位を得ているように思うpanpanyaの新刊です。写実的な背景の書き込みと鉛筆で描かれる柔らかい輪郭のキャラクターとの対比が気持ちいいですよね。 常に最高ではあるんですが、今回の単行本はかなり良かったです。街や建物にフォーカスした短編で構成されてるんですが、表題の商店街について描かれたものが素晴らしかったですね。
商店街がどんどん移動していく、という街の中で、その商店街に組み込まれた流れでお店を持った主人公が、商店街に着いて街を移動する。ついには街の外れまで商店街がたどり着くと、その先は何もない平原。 「この先は県境越えだよ」「君はここで店じまいにしてはどうかね」 これだけのセリフで言い表される世界観の広がり、その如何に味わい深いことか…。たまらん…
ホテル・ローレルの渡り鳥たち
数ページ読んだだけでずっしり脳に刺さる絵のうまさ。うおー、ハルタだ!青騎士だ!という気持ちにさせられる漫画です。漫画の上手さは静と動とがあると思っていて、ここまで挙げているのは特に静の絵作りが上手い漫画です。構図、キャラクターの衣装などなど、とにかく描きたい絵があってそのために作ってるんだろうな!という気持ちにさせられて脳が喜んでしまう。
モノクロでの絵の描き方がめちゃくちゃ上手いのが、イラストレーターじゃなくて漫画家だなぁと感心させられる。とにかく気持ちがいい一枚絵を見続けたい時にめちゃおすすめしたい作品です。もちろん、ストーリー自体も面白いので漫画として十分に魅力があると思いますよ。 双子のチャイナメイドとメンヘラバンギャがめっちゃ可愛いんすわ…。
CHILDEATH
動の漫画の話もしましょうか。子ども以外全員死滅した地球で、大人(になってしまった子ども)を狩り続ける「魔女」と呼ばれる化物と戦う子どもの漫画です。戦闘シーンのパワーが半端ないのと、容赦なく血も出る体も弾け飛ぶでどんどん子どもが死んでいくのが非常にモラルのないアドレナリンが出て良いです。
現象、事象ごとにその名前を冠する魔女がいて、それを全員ぶち殺すまで止まらないぜとベレー帽被った女の子が戦いまくるっていうのが趣味出てていいですよね。まどマギでもあるしチェンソーマンでもあるのかもしれない。 子どもが子どもとして生き続けるために脳をいじって全員廃人にしてしまうことで死を避けるっていう集団が出てくるあたりがたまらなかったですね。どこまで悪趣味をフルスイングし続けられるのか、今後が楽しみです。魔女のデザインがイケてて2倍おいしい。
レ・セルバン
王道でありながらも、今となっては若干コアになりつつあるジャンル、中世ファンタジーです。魔物に国を壊滅させられた王様が記憶を無くした娘を守りながら魔物に復讐するってストーリーです。この血生臭ささえも王道が香って非常に良いです。ロン毛振り乱して、ムキムキのおじさんがクソでかい斧振るってる男臭さが逆にお洒落に見えてすらくる。
魔物のデザインの懐かしさ(読んだら伝わると思う)、話の暗さとか含めて、ベルセルクの系譜ではあるんですが、ダークファンタジーと銘打てるような重厚なものはあんまり見ないのでこれは貴重です。絵もかっこいいんですよね。
カラーレス
いやー、終わっちゃいましたね。カラーレス。みんなもっとこの漫画の話をしてほしい。弐瓶勉がこんだけ売れた今なら絶対もっと刺さる人多いでしょ、と思ってたんですけど。でも走り切ってくれて良かったです。
色が無くなった世界で「色」自体が力である、というストーリーで、「色」が出てくるページだけカラー印刷というなかなか力の入った漫画です。「色」を再度集め、世界を掌握しようとする「教団」、色を奪われる過程で異形化していった人類、「色」を研究し、自身の力としながら戦う仮面の主人公、唯一人間の姿を保っている女の子。
全ての設定がキッチリ言語化できて、それだけでなんとなく面白そうなのが伝わる。根本がしっかりしてるから読みやすいんですよね。女の子の可愛さ、仲間のひょうきんさなど、シビアなストーリーを程よくエンタメにとどめるバランス感も良かったですね。そもそも白黒印刷の漫画で色の有無をストーリーと絡めるってメタ的で面白いですよね。最近新作の1巻が出たっっぽいので読まねば。
千年狐
これも一生俺しか話してない漫画な気がする。でも地味に連載長いからちゃんと売れてるんだろうな、ありがてー。中国の古代神話を元にしたファンタジーで、ユーモアの感覚や絵のタッチがちょっと大陸なんですよね。それが新鮮でありながら、でも日本で刊行されてる漫画なので、当然引っ掛かりなく読める、これが良いところですね。特に調べたことないですが、作者は中国の人なのかな?
最新刊の10巻で、ここ数冊続いていた怪談編が終わったんですが、これがめちゃくちゃ良かったんですよねー。良すぎて初めて応援メールを送りました。おそらく全体における話の位置付けとしてはサイドストーリーに当たると思うんですけど、これまでにないちゃんとしたホラーっぽさや人間味、人情などが細やかに描かれていて非常に満足度高かったです。ずっと好きな漫画なので本屋で新刊見つけるとキモいくらい笑顔になっています。
太陽と月の鋼
前作、累で一世を風靡した松浦だるま先生の新作。累に関しては絵のタッチがちょっと合わなくて読んでなかったんですが、どっかでチラ読みしたこっちはめちゃ好みだったので買い始めました。独特の荒さと風合いのあるタッチで、今思うと高橋葉介、水木しげるあたりの影響がかなり大きいんでしょうね。だからこそ、今回の時代劇ものは絵のタッチと世界観がよくあってるように思います。
これもカラーレスと同じく設定のぶっとさがすげーなと思う作品です。武家なのに刀に触れられず、没落していく主人公と、そこに突然現れ妻になった謎の美女、しかし美女は陰陽師に連れ去られ、それを追いかけ次々現れる敵と戦う。分かりやすいんだけど、この作品でしかないフックがあるのがいいですよね。 直近までやっていた天朸編がかなり良かったのでそこまで読んでほしいです。面白いのですぐだと思います。イタコの明ちゃんがめっちゃ可愛い。
アウトサイダーパラダイス
ほんまありがとう、ほんまに。ほんまありがとう。 あそびあそばせの実質続編。あそびあそばせではバカ3人のあそ研が主人公でしたが、今作は新聞部、美術部の先輩チームが主人公です。先輩チーム全員超好きだったのでマジで嬉しい。こんなユーザーニーズに応えるものがあっていいのか。
先輩チームは全員半分サイコで、あそ研にはないジメッとした人間関係があって、関係性のオタクの頭がおかしくなりそうになる。基盤としてギャグ漫画であることに変わりないんですが、質感が湿度高すぎて、あと全員サイコだからなんか全部ギャグも怖いんすよね…。笑っちゃうんだけどめっちゃ緊張感を持って読む独特の作品です。急に誰かが人殺しても驚かない怖さがある。
冥天レストラン
今年のキャラデザ最高で賞、大賞受賞、おめでとうございます。ウエイターの女の子のキャラクターデザインが凄すぎるんですよね。死んでるので大胆にも胴体が全て骨。実質逆バニーなのに何もセンシティブじゃない。主人公が仕事を手伝ったお礼として、肋骨をブラシで磨かせるというシーンがあるんですが、性癖が出過ぎてて頭おかしくなるかと思った。
死後の世界のレストランで、生前未練のあった魂に必要とする食事を提供して成仏させるって話で、分かりやすいんですけど。温かい食事を食べて、温かい記憶を思い出し、それと共に成仏していく魂を見ると泣けちゃうんですよね。食事って結構人格の根本だよなぁと思わされる。
選外
こんな感じで今年も10作選んでみました。選びきれなかった選外をいくつか載せて締めたいと思います。2024年も漫画読むぞ〜
奇妙で怪異な日常譚!
続刊でどこまで面白くなるか期待枠、ゆるかわいい
ヤニねこ
カスの漫画。カスだからこそ読む価値がある
凛子ちゃんとひもすがら
ほんまよかった;;;;;;;;
ふたりエスケープ
行かんでくれ!!!!100冊続いてくれ!!!!!!
スイカ
暗黒か、天福か、もしや暗間胘なのか…?
のあ先輩はともだち。
年に1、2回可愛いだけの漫画が読みたくなります、可愛い純度がかなり高くて良い、脳溶け
見えてますよ!愛沢さん
可愛い枠と見せつつちょっと不穏さが出てきた、2巻買いたいけど本屋にない。取り寄せねば。
メイド拾った
絵柄はサラッとしてるのに感情がデカすぎる
残ってる積みも合わせると130冊くらい今年は読んだ
これは余談なんですが、僕が読書管理に使ってるYomooってアプリがあって、かなりソリッドなアプリでお気に入りなんですが、よく行くシーシャ屋で制作者本人に偶然会いました。デカすぎる感謝を伝えました。
2023年を振り返る(映像活動編)
さて、気づけば2023年も終わりが近づいてますね。
今年は自分としてはかなり久しぶりにものづくりに力を注いだ年で、振り返ってみるとクソ忙しかったけど充実してたなと思います。
せっかくなんでいくつかテーマに分けて今年を振り返ろうと思っていて、まずは今年の辻の活動の最たるものである、映像制作の話をしたいなと思います。
よろしくお願いします。
昨年の10月?ごろに友人2人とin-factoという映像制作チームを立ち上げました。立ち上げたというとなんか大層ですが、まぁ始めたということです。このチームはホラー映画が好きなメンバーでのみ構成されており、当然アウトプットもホラー映像となりました。
初期メン3人 このあとosdくんが合流する
主に撮影を担当するykpyくんとは大学のサークルの同期で、演者が多い藤本くんはもともとykpyくんの音楽友だちからつながりが始まり、今は猫を堕ろすのサポートでギターを弾いてたりする感じ。
4人目のメンバーとして合流したosdくんはサークルの後輩(所属してた時期はかぶってないけどなんか友だち)で、米を一合ピッタリ出すボタンがついた米びつみたいなよくわからないガジェットをたくさん持ってるナード。
みんな東京の友だちです。
音楽をやってた人間たちがなんで映像を撮ることにしたかというと、始まりはこのMVでした。
編集をSuspended 4thのサワダがやってる これも音楽の友だち
これの撮影をするために初めて絵コンテ描いた上にカメラを買ったのが、猫を堕ろすのシンセ&ボーカルのykpyくんであり。
僕は撮影に手伝いで呼ばれ、なんかよく分からないですが猫?人間?とかいうの?をやらされたりして、大変ながらもワイワイと作品を作ったわけです。
それからしばらくして、ykpyくんはなんかイケると思ったのか、映像を撮ることに手応えを感じ始め、そのままなんかの勢いでみんなホラー好きだよね?じゃあホラー撮ろう!となりこのつらすぎて少しだけ自尊心が満たされる活動も始まったわけです。
今年はin-facto的には盛り上がりもあった年ではありました。一時期YouTubeくんのアルゴリズムに気に入られて、特に広告も打たないけど動画がグイグイ伸びてた時期があって、その時には「広告打たなくても自治がちゃんと機能してフックアップしてくれるプラットフォーム最高〜」とか思ったりしてました。
このまま行きゃあ半年後には収益化行けるなと指数関数的に伸びていくような皮算用曲線を脳内でシミュレートしたりもして、まずは撮影機材をペイ出来るとこまで行きてぇ〜とあんまりやる気を全面に出さないタイプの情熱を燃やしてましたが、まぁアルゴリズムさんは気まぐれなのである日突然見向きもされなくなり、再生回数も0/日みたいなのが続いて、結局今も特に金にならないチャンネルだけがあります。
この時は思わず「YouTube シャドウバン」でSNSとか検索しました。なんか被害妄想のYouTuberがYouTubeの公式アカウントに凸ってるのしか捕捉できず己を恥じました。
そんな感じで、今んとこ社会の毒にも薬にもならない感じでやってきたin-factoですが、一応今年は10本動画を上げました。全員サラリーマンだと思うとかなり健闘なのではないでしょうか。
僕はこの活動で、1人でも多くの人に対して「何気ない日常での嫌な緊張感」を与えることに心血を注いでいます。ファンタジーが昔から大好きで、漫画を読んでは自分ならどういうキャラクターとしてこの世界で生きるのか、みたいなロールプレイ妄想を膨らませつつ育った僕は、とにかく日常にファンタジーをもたらしたい、その方が絶対に楽しいという決めつけで生きていて。
ホラーって一番日常に近いファンタジーだと思ってるので、それをめちゃくちゃ生活に寄せていくことで、見た人をみんなファンタジー側に引き込んで楽しく暮らしたいと思ってこの活動をやっております。
今のところ、「すべての作品で違う嫌さがある」「最悪」等お褒めの言葉多数。励みになります。
せっかくなので2023年に作った作品を一本づつ振り返っていきましょう。
1月公開 傘
作品群の中でもかなり異色な映像だと思います。in-facto作品は、基本的にジャパニーズホラーをやりつつ、映像表現としては洋画の空気感を引用する、みたいな作り方をするのですが、この作品については全てを洋画っぽくした作りにしています。冒頭のシーンなんかも、洋画あるあるのカウチポテトっぽさを目指していたり、全編を通じて効果音等もカラッとしたものを使用するようにしています。また、怖さと同時にキャッチーさ、バカバカしさを加えることでスプラッタ作品みたいな肌触りを目指しました。傘をバキバキにしたり血まみれにしたりしているのもそう言ったものへの志向です。あんまり露骨なものは映さないことが多いですがここではあえて、という感じで。なんかメロコアみたいだなとおもったので、スタッフロール用にそれっぽいイラストを描きました。
脚本は大体僕が書いていて、「傘って当たり前のように半公共物のような扱いを受けているけど、その割にシェイプに殺意がある」みたいな会話をヒントに膨らませて行った記憶があります。何気なく玄関先に干してたりする傘だけど、仮にそれを誰かが持ち去って悪いことに使っても気づけないのがなんか怖くないですか?
傘がより強い悪意で借用されるごとに、支払われる金額も増えていく。目に見えない誰かの不幸は対価が支払われれば黙認できてしまうよね?という他人に対するドライさをちょっと露骨に嫌な人格のキャラクターを主人公に据えることで表そうとしています。
ちなみに四人目のメンバーとなるosdくんの初仕事もこの作品です。
絵コンテは藤本くんが描いてくれていて、こんな感じで脚本、絵コンテ、撮影が全員別とかも良くあるのがin-factoです。なかなか難しいですが、少人数活動のサステナビリティを担保するために、いろいろな作業を交換可能にしていくのがポイントだと思ってます。
アウトロ作ってくれた澤田もありがとう!
2月公開 車中泊
原案in-facto、脚本、絵コンテ辻です。いくつかフックの効いたテーマを続けてきたところだったので、もっとシンプルに何が怖いか考えてみよう、というところに立ち返ったのがポイント。でもそれだけでは独自性が足りないと思ったので、「車中泊自体めっちゃ不気味じゃない?」というところからこれだという転回が出るまでひたすらみんなでブレストした結果、車中泊=孤独だから怖いという前提をひっくり返して、そこに人が来た方がもっと最悪になる、という結論が出せたので形になった作品です。ここまで出した後に三人がそれぞれプロットを持ち寄り、辻が統合する形で作りました。
これはファウンドフッテージをストレートにやることを目的としていて、呪詛、コンジアムやREC等の作品からの影響が強いです。あんまりストーリーを描き切ることはしないで、イメージとしてはお話の真ん中80%くらいを映像に起こして、前後の余白を残す作りが好きなんですが、これは怪異の正体の現場まで乗り込んで、しっかり最後まで描く作りにしました。これも前述した作品のシステムを借用するのが目的だったからです。海外のこの手のホラーはだいたい最後に狭い道を通った先で悪魔崇拝の祭壇とかが出てくるので、それを横付けした車の中に作ることにしたわけです。車の窓にはたくさんの人間の名前と意味ありげな地図の写真が貼られていたり、男女問わない複数名の私物が車内に落ちていたり。最後のシーンは明らかに実在感のある恐怖のシーンですが、ではあの人たちは実在するのか?あの車は本当に現実のものだったのか?の部分を曖昧にするのが自分なりのポイント。
in-facto作品で一番再生されてるのもこれです。一万回も見てもらえるとは思ってなかった。
言ってしまえば、撮れればほぼ終わりみたいな作品だったので、いかに場の雰囲気をきちんと作り上げられるかにエネルギーを割いています。場所の選定も僕がしていて、一時期航空写真狂い※だった時の経験を生かして、ほどよく人が通らないけど、山奥すぎて通報されるとかがない絶妙なラインの駐車場をいくつかピックして撮影に臨みました。
※地下性の昆虫や土壌生物にかなり熱を上げていた時期に、毎日Googleマップの航空写真を見ながら地形や地質を見比べて、そこで採れる生き物を想像する作業をしていたので、地形図と航空写真でなんとなく土地の雰囲気がわかるようになった。やっぱ全て繋がってるんすわ。
大変だったのが天気で、何をとち狂ったか前日にその冬一番の大雪が降って結構ちゃんと東京も雪が積もり、今回ばかりは撮影断念か、というところまで追い込まれました。が、なんとかバックアップで雪の影響の少ない土地を探して撮影できました。バックアップの場所のがロケーション良かったので結果オーライ。
朝ぼらけかな
朝になって早朝登山老人の車が駐車場に来始めたあたりが最高にギリギリでしたね。こちらは明らかに異常な車なので通報されなくて良かった。
3月公開 似顔絵
制作体制が変わり、辻、ykpyの2人で撮った作品です。人手が減ったので、より不確定要素を減らしつつ、撮影側に立たなきゃいけないので演者は自分たち以外にお願いしないといけないというのがポイントの作品でした。脚本、絵コンテ辻。
絵描き役のにっしーさんが撮影場所のアトリエも提供してくれるとなって、より一層作品のイメージが固まったのが記憶にあります。モデル役の伶菜さんはこれまた音楽繋がりの友人で、マジで音楽関係の友人で全て成り立ってるコンテンツです。
とにかくテイクを撮り切れるようなストーリーにするために、セリフを一切使わないことに決めたんだけど、これは表現について考える上で一つ面白い挑戦だったなと思います。NujabesみたいなピアノBGMがいいっすよねぇ。一番アートな肌触りの作品になったかもしれない。光がしっかり当たるロケーションだったので、光の表現の統一に苦労した記憶。あと、映像に映らないのに大量の知らん人の似顔絵を描いてた前日の夜がかなりメンタルに来ましたね。こういうのは映らないけど全部描くのがやっぱ大事だと思うんすわ。呪いを込めなきゃホラーにならないんで。モノづくりにおいて脳筋なので、苦しんで産むことで血が通うと思っている節がある。
https://www.thisman.orgのTHIS MANがモチーフ
4月公開 セラピー
新メンバーとしてosdくんを迎えての初めての映像。割と映像が見られていた時期だったので、一回小難しいもの作ってみるか、となり作った作品。結果としてまぁ一番見づらい作品だとは思う。
3人でプロットを考えてる時に、会話の微妙なすれ違いやズレが折り重なって嫌なことが起きたら厭だね、という話で盛り上がって、その場で3人のパーソナリティだけ軽く決めて実際に本番みたいなディスカッションをして、それを少しだけ脚本として整えて映像化してます。途中何箇所か、論旨と関係のない話に脱線するんだけど、これは実際にディスカッションをやった時に出てきたものをそのまま採用していて、そういう生っぽさが気持ち悪く見えていれば成功かなと思っています。
絵面としてあまりに地味だったので、最初に3人の結末を提示することで、オチに向けてどう話が動くのか?というところに興味を持たせてゴールまで牽引する、という作りにしています。たった30分程度の打ち合わせで各々の死生観みたいなものが色濃く出たのが、in-factoっぽさなのかなー。
最後のykpyくんがバケツに突っ込まれるシーンが思ったより生々しいですよね。撮ってる人間から見るとまぁ笑えるんですけど、なんも知らん人が見るとちょっと怖いかもですね。
5月公開 裏/表
2本セットの作品。原案から絵コンテまで大体辻。幽霊側の気持ちに立ってみようと思って書いた脚本です。この世の全てのことって、一面だけでは分からないじゃないですか。僕らが幽霊だと思って恐れてるものも、幽霊側から見た時どういう事情があるんだろう?というのは思ったりしますよね。現実で起きていることもそうだと思ってて、どれだけ悲惨な出来事や事件があったとしても、自分を正義と断定して糾弾することは僕は出来ないなと思うことがよくあります。特にSNSとかでよく見るじゃないですか。不祥事とかに対して強い言葉を浴びせたりしてる人。自分がそうならないと思ってるからなのかなと思うんですけど、本当にそうなんですかね?正義のルールが変われば箸落としただけで死刑かもしれないわけじゃないですか、自分はそういう気持ちでこれを書きました。そうならないように気をつけよう、という戒めでもあります。
映像としてはとてもコンパクトにまとまっていて好きです。ジンくんが上手に演技してくれたおかげで「裏」はいい空気感が出ているし。コップの氷が溶けて、カランっと鳴ることで現実に戻ってくるシーン、あの画角めっちゃ気持ちいいですよねー。全体的に気持ちいい絵が多い作品です。
「表」はとても限られた空間の中でいかに絶望感を出せるか、というチャレンジでした。どこまで表現できたかは分からないですが、ブザー音が鳴って人が引き摺り込まれるシーンとかはあのワンシーンだけで世界観を色々示唆できるものがあって面白かったかなと思います。意外とコメントで裏表の繋がりを考察してくれる人が多くて嬉しかったですね。
7月公開 調査報告:L市
以降、特殊清掃までの3本で、壺三部作と内部的に呼ばれている作品群の1本目です。三部作それぞれで脚本を分けていて、これはosdくんの脚本です。重層的で見応えがありますよね。
この3本をシーズン1の締めにしようという話は元々していて、共通するチャレンジとして、一つの怪異をベースにオムニバス形式で世界観を作っていく、というものがありました。まぁ要するに近畿地方のある場所について(https://kakuyomu.jp/works/16817330652495155185)です。ではその根幹に横たわる怪異を何とするか、というのがなかなか難しかったんですが、壺というキーワードが出たことでみんなのイメージが具体化できてなんとかなりました。
“壺”ができるまで
突き詰めていくと、「悪意を集めていくことで大きな呪いが成就できる」という話でその媒体として使われるのがこの壺のアイコンです。色々デザイン考えましたが、程よくカッコよく、不気味なのができて満足です。ただ、壺だけだと作品同士の緩やかな結び付けには多分物足りなくて、もう一つトリガーになる「ご苦労様です」というワードが出せたのが大きかったですね。
この作品は今までで一番舞台が多い作品で、事前準備が大変でした。作るものが多いので、最初の報告シーンのスライド作りは藤本くん、途中の2chもどきのコーディングはosdくん、みたいな細かい分担がされています。このチームはウェブ関係の仕事をしているメンバーが多いので、結構ちゃんとしたクオリティのインターネット小道具が作れるのが強みですね。ちなみに僕は2chもどき3スレッド分のテキストを全部書きました。誰もちゃんと読んでないと思うんですが、「庭師になる」スレのあの頃の自分語りスレ感がかなり秀逸だと思ってるので、暇すぎる人は動画を止めながら読んでみてください。
ウェブに吐き出しやすいように、スプレッドシートで管理されてます
いっぱい悪口が並ぶシーンのためにGoogleフォームを作ってみんなから悪口を募集したんですが、定期的にドカドカ量を投げ込んでくれる人がいたりして、いい世の中やなぁと思いました。
自分も役者で出てるので、演技ポイントを二か所話します。一個目はスレを読み上げてるところで、あれは動作と声を別撮りにするととっても編集が大変なので、演技含めた一発撮りです。マウスの動かし方、スクロール幅など色々こだわりポイントがあって、ここら辺はリアリティと見やすさの両立のために、情報伝達を仕事にしてる身として頑張った感じがあります。
もう一か所はラストの発狂して走り去るシーンですね。走り去った後に訳のわからないことをわめているんですが、これは別撮りです。ご安心ください。流石に夜中の団地で騒ぐのはね。。
編集中にykpyくんの家のクローゼットで適当なことを喚いたのが使われてます。人んちで急に大声を出したりできます、そういう仕事待ってます。
8月公開 健康生活 セラピーV
藤本くん脚本が冴えまくってる作品です。藤本くんはチームの中で一番受け手のことを考えてモノづくりをしているのでキャッチーなものを作るのがすごく得意です。ほんで、悪趣味なものも得意ですが、受け手のことを考えてるのでちょうど成立する温度感になるんですよね。これは才能だと思います。
今まで友だちに頼りまくってきたin-factoチームですが、これは初めてアマチュアの役者さんを起用して撮った作品です。藤本くんが見つけてきてくれた役者募集サイトで募集したんですが、ホラーで黒いものを口から吐く、なおかつ50代以上っていうニッチな条件にもかなりの応募があって驚きました。その中である程度ニュアンスを汲んでくれそうなお二人に依頼をしたのですが、想像以上に仕事がやりやすくて助かりました。どうしても心労が多くなるんで腰は重いんですが、もっと外部の人とも映像作っていかなきゃではあります。
後の編集がありえんほどきつかった作品でしたね。テレビ番組にする、というテーマがあったので、細かい字幕作業や映像素材の追加等等、普段の制作の五倍くらい作業が多かったです。流石に自分も映像をいじれるちゃんとしたPCを持とうと思いました。
この作品での辻の仕事はあんまり無いですが、作中で登場する小説「ルビンの思惑」のカバーデザインをしてます。昔zineとか作ってたので、紙物の印刷にはこだわりがあって、ちょっとだけお金をかけて作りましたが、いい仕上がりで満足です。
当然そでの作者紹介とかは映らないんですが、せっかくだしここまで作りたいですよね。フォントが清潔で気に入ってるんですが、何使ったか忘れました。思い出したい。
あ、あと黒い液体を作ったのも僕。これも地味に黒さ、味、とろみなどにこだわりがあります。
この作品は三部作の中で一番「壺」の影が薄いんですが、実はコンセプトとしては一番根幹に迫っている作品かもしれない。映像の中にもちゃんと壺の貼り紙が映り込んでいるので興味のある人は探してみてください。
10月公開 特殊清掃
辻脚本の作品です。三本の中で一番暗いのが特徴です。三部作は全ての撮り始め前にプロットは揃っていて、その中で実現可能性順で撮られてるんですが、この作品はゴミ屋敷を作るという一点のハードルで最後に回されていた作品です。この作品のために二ヶ月空のペットボトルを溜めてて、普通に奥さんに嫌がられました。
あまり美術で頑張る作品は避けていたきらいがあります。それは誰も専門家がいなくて必ずボロが出るのがわかっていたからでもあります。この作品は、苦手意識のあった美術を頑張ってみようという裏コンセプトもあった作品でした。ロケ地はセラピーVと同じで、作中で明示されてませんが、一応セラピーVのうん年後、みたいな設定でもあります。ロケ地が同じだったことと、このロケ地自体にかなり場所としてのパワーがあったために、なんとかゴミ屋敷っぽくすることができました。
ストーリーとしても、三部作を締めくくるような、ゴールを少し見せた感じの話になっています。同じ部屋の中をぐるぐる回っていくとどんどん部屋の様子がおかしくなっていく、というストーリーですが、これがなかなか難しくて。細かい小道具をどうするか、映像としてどうするかなど撮影難易度も高く、この一年の集大成になったのかなと思います。
一人称視点なのでバレないようなカットの切り替えが難しくて、露骨にならないようになんでも無いところに編集点を入れたり、気合いで長いテイクを撮ったり、汗をかく部分が多かった作品です。
家というロケーションをフルに使ったという意味では呪怨っぽくもあるし、あとはアリアスター作品の影響を受けて画を作っている場面が幾つかあります。例えば、黒いペットボトルが廊下に点々と並ぶシーンはヘレディタリーのラスト、全裸の人間が並ぶ中ツリーハウスへ主人公が向かうシーンのことを考えていたし、ラストのosdくんが横たわっているゴミ山は、頑張ってミッドサマーのグロさと荘厳さを併せ持つ感じを出そうとしました。あとは多重人格探偵サイコの脳に花植え付けられている遺体とか、PSYCHO-PASSの二期だったかの、人間バラバラ芸術作品みたいなのとかをコンセプトイメージとしては持っていました。
そこら辺を引き合いに出しちゃうと全然作り込みが足りないっすよね。精進します。
演技はuskeyさんがとても頑張ってくれてきっちり撮れました。やっぱマインドが同じ人とモノを作るのは楽しいです。
みんな頑張ったな〜って感じの集合写真
名札。ほぼ映ってませんが。
こんな感じで、なんとか2022年9月から約一年で13本の作品を作ることができました。2024年はシーズン2撮るつもりなんで頑張ります。
大変だったけどとっても充実感のある活動でしたねー。みなさん今後ともin-factoをよろしくお願いします。
毎回地味にきつい香盤表作り。でも楽しい作業でもある。
ご苦労様です。
覚えておきたい動画メモ_20231026
YouTubeめちゃ見るけどほとんどサムズアップとかリストに入れるとかしなくて、良い動画のことを忘れてしまうのでメモすることにしました。
切り抜きの出来が良くて見やすい。そんなわけなくない?ってことしか起きなくて台本あるのかと思うけど、逆にこれに台本があるのなら台本が出来すぎだと思う。
ベルモンドとカレーパン作るのも良かったけど、もっと面白いのが来てたまげた。
地味に「人がやっていないことにはやってない理由がある」という鷹宮さんのセリフに含蓄がある。
ヴァロラント全くやったことないけど笑顔になれる。
VTuber史上最も面白い配信だったのではリアタイできて良かった。配信者でスパチャしたことあるの、黛の生前葬配信だけです。
音源でMolchet Doma聴いてソリッドさに怖さを感じて、映像を見てソリッドさにもう一回怖さを感じた。社会主義の影響下じゃないと出せない質感がある。結成5年とかなの嘘すぎると思う。
たまに公開されるけど基本限定公開なのでいつでも見れるように。一番元配信が見たい動画。元配信などない。
本命よりもチカヌマエビに酷く心を乱される動画。これ見てからアンキアラインの生き物を飼いたくなって、とりあえずと言うところでホロホロシュリンプを買いにアクアリウムショップに行ったけど売ってなかった。なんか最近のはあんまり色が良くないから入れてないらしい。そういうのあるんだ。
話は逸れるけど、この人が結構バズりながら地下鉄の染み出し採集とかしてるもんで、なんかやりにくいなぁと思っているマニアの人がいそうだなと勝手に心配している。日陰のままだから平和が守られるものもある。
なんの動画?????
もっと名場面はあるけど、これにはなんかコクがある。シレンやりたくなる。
このチャンネル、最初は編集された動画の切り抜きって虚無ではないかと思って距離を置いていたけど、引くほどの投稿ペースと一切収益化のことを考えてない動画作りに「同人」の空気を感じて好きになった。ただ、自分は加藤派なので、名場面集の尺が加藤と恐山で4倍差があることを根に持っている。匿名組はオンリーでもデカい島なんだろうな〜。
ほんまに怖い。こういう動画があるの、古のYouTubeを思い出させられる。ホラー撮る時は毎回これが心の中のゴールになってるけど、出せる質感じゃなさすぎて無理。
小難しい音楽で小難しいこと語りたいのはどこの国のオタクも一緒なんやなと思わせてくれる動画。
↓良すぎコメント
全然絵から何を言いたいのかピンとこないけど、なんかビジュアルが整ってて分かった気持ちにさせられる動画。デザインの虚業たる例。数学あんま知らない人がフィボナッチ数列に雰囲気で美を見出すみたいな感じ。
でもこの動画のおかげでMeshuggahが今も最前線でむずすぎメタルをやってることが分かったので良かった。
はやくこれになりたいシリーズ。オールタイムベスト。全部美しい。
クラシック。
これが許されるならYouTubeなんでもOKなのではという勇気をもらえる。最悪を見ると最悪の気持ちになって笑ってしまう。
なかなかないくらい面白い絵面に毎回笑ってしまう。ダークソウルの頃からピクルスの動画見てたから、最近の活動を知った時ウケてしまった。
3Dにする意味が全くないからこそ価値がある。死ぬまであと100回は見ると思う。
おだやかな気持ちになって終わりましょう。
随時更新かもしれない。
冷たいトマトソースを作るための技術的理解
辻知広
bookshelf bistro/distro, cllctv. works
1. はじめに
前稿からかなりの年月が経った。先日3年ぶりの単独主催となる音楽イベントを行い、そこでフードの提供を行った。
【Live Photo!!!】
— cllctv.(コレクティブ) (@cllctv_jp) 2023年9月22日
2023/9/16 (Sat) Internal Meeting Vol.2 @CIRCUSTOKYO
▶︎BAND
Puff
SigarDown
猫を堕ろす
スーベニア
FUJI
corner of kanto
▶︎DJ
Kuroiwa Yasuki
増田優作
mionn
Ikalaser
Bungo
SEKITOVA
📷
shimadamasafumihttps://t.co/6VfXYysP7m
Ruka Ohtahttps://t.co/NyIZxcBvwx pic.twitter.com/gdpunSEDNH
これまでと異なり制約の多い中で自分なりに出せるものを追求した結果、それなりに美味しいものができ、また周囲からの評判も良かったので、こうして書き残すことにした。
著者のこのタイプの文章に触れたことのない読者のために注意を書くならば、ここから先の9割は料理に関係のない文章であるため、読み物として読んでいたら何故か料理ができていた程度の温度感で触れることを推奨する。あるいは読み飛ばす。
今回の出店における料理においては、通常の料理と異なる軸上での評価が必要であり、それゆえに品目の選定要件が通常と異なる。
以下にそれを示す。
- テイクフリーでの提供であること(人手が足りずスタッフが常駐できないため)
- 加熱を行わない料理であること(においの強いものは提供NGであり、また1から火の番ができないため)
- 手に取りやすく、食べやすい提供スタイルであること(クラブイベントであり、ライブイベントであるため腰を据えて食事ができる環境ではないため)
- ある程度空腹が満たされるものであること(再入場不可のため)
- 同時に提供するミックスナッツと異なる食味のものであること
もう少し掘り下げて考えてみる。
今回の選定要件において大きな壁となるのが1,2である。なぜかというと、通常、料理はこの1,2がクリアされている状態が前提であることが多く、それが無いこと自体が美味しさを評価する上でのビハインドとなるからである。料理における美味しいとはなにか。
そもそも、美味しい=味であることに疑いの余地はないが、味とはつまるところ5種類の味覚に旨みを足した6つの感覚の算数でしかない。
この算数で「美味しい」が決まるのかというとそうではなく、本質はより定性的な部分にあると自分は考える。それはいくつかあるが、今回は「手間がかかっている」ことと、「安心できる」ことの2点を美味しいの要件として以降を進める。
料理とは、一方的な献身の行為であり、人に満足感を与えるために自分の可処分時間を切り売り提供しているものである。某ラーメン漫画で「人は情報を食うのだ」と言っているが、これはなかなかに正鵠を射ていると自分は思っており、更に自分の言葉で言うなら、料理とは「人の思いやりを食うものである」と自分は考える。
つまり、手間がかかっている様子が見えるほど、人は自分のために可処分時間を割いて提供する他人にありがたい気持ちが湧いて料理を美味しく感じると自分は考えている。また、これはベースの味をプラスに引き上げる、加点方式の指標である。今回の提供スタイルでは人の手による提供ができないため加点要素がない。
「安心」は一方、減点方式の指標である。果たされていることが当然で、出来ていないだけで減点になる。食べた料理の味が思っていたほどじゃなかった時、何を考えるだろうか。作った本人であれば、料理の工程のミスを振り返る、そうでなければ作り手の立つキッチンを覗いてみる、食材の様子を観察する。減点要素を探しているのだ。然して減点要素が見つかると、安心のボーダーラインは打ち砕かれ、味に減点評価が入る。
「安心」とは非常に曖昧で不安定なものである。1,2の提供スタイルはともすると減点ポイントとなる。それゆえ、とにかく提供される料理から不安要素を除くことが、今回の出店の成功につながると考えた。
また、地味に効いてくるのが冷たいままでの提供だ。一般的に冷たい料理というのによい印象はないのではなかろうか。冷や飯、書き置きのされたラップのかかったおかず、冷蔵庫にある昨日食べ残した惣菜。何かとちょっとしょんぼりする要素が多い。これは冷たい料理にもの寂しさを感じさせるように情緒が形成されている我々のジレンマでもあり、一方で衛生的な観点など感情論だけでは無い事実でもある。
実は味というのは、温めることでかなり輪郭をぼかして評価を引き上げることができる。それは前述した、火が通っているからという安心でもあり、また、料理を温めることで、各味のパーツの境界線を曖昧にして何となくまとまった印象を与えることが出来る。世の料理は複雑な味覚の重ね合わさったものであることが多く、それらは温かいからこそ精緻に成り立っていて、冷たいと軸がブレる。つまりは、味の情報量を増やしすぎると、冷たい状態での提供はうまくいかないということである。
これらから料理の選定における要点を抽出すると以下になる。
- 持ち運びやすく、ゴミも処理しやすい
- パンと合わせる(空腹を満たすことと携帯しやすさ)
- スープ状=乾き物のミックスナッツとの対比
- 植物性=動物性材料は加熱できない点から不安が残る
つまりはトマトソースしかないという話になる。
2. 材料/手法
以下に本調理手法の典型的な材料を示す。20食前後を想定した分量表記となる。
- ホールトマト缶(1缶)※特にメーカーは問わない
- カットトマト缶(1缶)※特にメーカーは問わない
- ドライトマト(数粒)
- 生のトマト(3つ)※あまり熟していないものの方が良い
- おろしにんにく
- カイエンペッパー(ホールで2つ)
- 乾燥バジル(どさどさ)
- 塩
- 砂糖
- オリーブオイル(煮込み用と味付け用が分けられるとなお良い)
調理法は以下のとおりである。
生のトマトの準備
- 生のトマトは、賽の目状に切り、塩をしっかり振って、乾燥バジルをどさどさまぶし、ざるに入れて重しをして水気を抜く
トマトソース
- 大きめの鍋に底面の7割程度のオリーブオイルを敷き、弱火ですりおろしのニンニクと刻んだドライトマト、カイエンペッパーに火を通す
- ニンニクから香ばしい香りが立ってきたら、ホールトマトを1缶と、空になった缶一杯分の水を鍋に入れ、弱中火で煮詰める
- おおよそ鍋の分量が半分程度になったら、塩大さじ1、砂糖大さじ1〜2程度を入れ、カットトマト缶1つと空になった缶一杯分の水を入れ、弱中火で煮詰める
- 足した水の分くらい嵩が減ったら、火を強火にし、しっかり煮立てる
- 煮立ったソースに下処理をした生のトマトを入れ、さっくりかき混ぜたら、もう一度煮立たせ、火を止める
- 余熱でトマトに火を通す間に味見をし、適宜塩と砂糖で味を整える
- 粗熱が取れたら仕上げの味付けにオリーブオイルを大さじ1程度入れ、全体を混ぜ合わせる
- 完成!(しっかり冷ましてから冷蔵して、ほっそいパスタとかにかけて食べよう)
作例:
3. 方法論と考察
基本的に料理で手軽に美味しいと感じるものを作るには、動物性の材料を入れるのが早い。しかし、今回は前述の理由からそれが難しくなったため、野菜単体で味のレイヤーを重ねるためにトマトを選択した。
また、冷やして提供するためになるべく味の方向性のまとめる必要があり、いっそということで味のレイヤーを全てトマトで賄ってみた。調理の要点を示す。
1. 各材料のトマトの性質の違いを理解する
今回使用したのは、ドライトマト、ホールトマト缶、カットトマト缶、生のトマトの4種類のトマトである。まずはこれらの違いを理解した上で、味の構成の適切な部分にはめ込む必要がある。
ドライトマトは早い話乾物なので、出汁を取るために使う。そういうわけでまず最初に火を通し、十分に味を引き出す。
トマトの缶詰はホールトマトとカットトマトの2種類を使うが、何が違うか理解して使い分けるのが重要になる。単に丸まま水煮にしているか、カットして水煮にしているかの違いでは無く、一般的にホールトマトは細長いトマト、カットトマトは丸いトマトを材料に使っている。
この2種類のトマトに特性の違いがある。ホールトマトで使われる細長いトマトはより煮込みに適していて、酸味が強いがしっかりを火を通すことでその酸味が旨み、コクと言ったものに変わり、どっしりとベースを支える味になる。それゆえに最初に鍋に入れ時間をかけて煮込む。
料理をしていてホールトマトに酸っぱい印象を持っている人は、一度しっかり煮込んでみてほしい。30分とか1時間煮込んでいると、急に酸味の角が取れて、コクと旨みが前面に出る瞬間がある。それ以降がホールトマトの本領発揮だと自分は思っている。
一方でカットトマトに使われる丸いトマトは、日本で生で食べるトマトに近く、比較的酸味がおとなしく、フレッシュな味わいがある。なので、煮込みの後半に入れてフレッシュさと強すぎない酸味を追加するのに使う。
生のトマトの今回の役割は主に食感である。生のトマト以外ほぼ固形がない仕上がりになるので、これがないと食べ応えがない。それゆえに、ほとんど予熱で火を通し、火が入りすぎないようにする調整が必要になる。
また、生のトマトはとても水分が多い。煮込み時間を気にしないのならそのまま入れて煮込んで水分を飛ばせばいいが、上述の通り、生のトマトには火を通し過ぎたくないので、先に塩を振って水分を抜く。
2. 単調に見せないための最小のアドオンを考える
上述の4つのトマトの使い分けで8割方味は整うが、残り2割を調味料で詰める。まずはニンニク。ニンニク自体はなんか動物質の質感が味に加わる印象があるので、お守り気分で少し入れている。
続いてカイエンペッパーのホール。要するに乾燥唐辛子。これをしっかり黒くなるまで炒め、ソースを作ることでそこそこしっかりピリッとした刺激が味に入る。香辛料的な辛みは味にエッジを出してくれるので適量使うとちゃんとした料理の質感が出る。煮込み続けると辛くなりすぎる気がするので適当に取り出している。
トマトに合わせるハーブといえばバジル。今回は乾燥のものを使用した。生のトマトにしっかり風味を移すことを目的としていたので乾燥が最適。思いつきで水抜きしてるトマトにまぶしたが、大体やっていることは昆布締めと同じなのではないか。水分を抜いて代わりに味を入れる感覚である。また、食感を担うトマト自体に風味をしっかりつけると、ダイレクトに舌に届くので、煮込んだ後でも風味が飛ばない。
あとはトマトの切り方。賽の目状が実は大事で、基本加熱するトマトなら賽の目状に切るのが自分は最適解だと認識している。そもそも自分は火を通したトマトが好きでない。せっかくの歯応えや青臭い風味がなくなるし、加熱されて剥けた皮がマジでだるい。というわけで、歯応えをなるべく残すために厚みを出しやすく、皮も小さく出来てベロベロになってもダルくない賽の目がよい。
最後にオリーブオイル。フレーバーをぶち込む。ネットのどこかでオリーブオイルは油じゃなくて調味料だから怯まずかけろというのを見てから実践している。そのまま食べる用のオリーブオイルはいいのを使うとかなり香りが違うのでお金かける価値あると思います。どうせ他の材料がやっすいんで。
以上の要点を踏まえてレシピの流れで作ってみると結構美味しいと思います。お試しあれ。
4. 謝辞
トマトソースのインスピレーションをくれた、三鷹のパスタの名店、わざやのトマトと牛すじのクリームソースにまずは最大限の感謝を。続いてイベントを作ってくれた全ての人へ、ありがとうございます。過去一懐にもインパクトのあった企画でしたが、あの場に来てくれた人たちのことを思うと、報われた気持ちがあります。あとは、僕の料理を美味しいと言ってくれる皆さん。皆さんのおかげでこうやって小難しく料理ができます。またメソッドが蓄積されたら何か書きます。おつかれさまです。
最後の最後に。ほしい物リスト送ってくれた皆さんのおかげでしっかりフードの材料費は回収できました。感謝感謝です。猫もたくさん餌もらって喜んでおりました。
2022年良かった漫画10選
表題の通りです。
漫画を読むのが好きで趣味といって憚らないのですが、今年もそこそこな数読んだな〜って感じなので、そこからおすすめを10作選びました。選定基準を一点だけ設けていて、今年1巻が発売された漫画という基準で選んでます。
なので、年末年始暇だなって人とかもこれ読んで気になったらサッと追いつけると思います。よければご参考に。では行きます。
クロシオカレント
https://www.kadokawa.co.jp/product/322205000863/
今回選んだ10作品はいずれも異なった良さがあって順位づけは難しいところではあるんですが、今年良かった漫画を一本挙げろって言われたらこれ挙げます。
こかむも先生はもともと4コマ漫画を商業誌で描いていて、僕の知る限り長編作はこれが初めてだと思うんですが、とにかく絵がパキッシュッとしていて読んでて気持ち良いのと、街という一つの箱庭の中で不条理とSF(少し不思議)と殺伐とを繰り広げる世界観が大好きです。
僕は道満晴明先生が大好きなのですが、ニッケルオデオンとかヴォイニッチホテル好きな人は刺さるんじゃないかなー。
装丁がすごくおしゃれなのも高ポイントです。あとキャラデザが超かわいい。最高。
日本三國
https://shogakukan-comic.jp/book?isbn=9784098510306
今回選んだ中で一番売れてる漫画かと思うんですがどうですかね?
最近は進撃の巨人とか、チェンソーマンとか、少年漫画でも結構シビアな展開や容赦ないキャラクターの退場が受けて入れられるようになってきてる気がしています。僕はキャラは如何に死ぬかが一番大事だと思っていて、死ぬ時が一番輝くと思ってるし、死を如何に表現として使うかを考えながら漫画を読むんですが、日本三國の一話はその点で言うとグッときましたね。
話としては、現代文明が荒廃したあとの世界で日本は三つの国に分かれて戦っていて、その中の一国に生まれた主人公が、自分の知力を武器にのし上がっていく軍記ものです。
知を武器にと言いつつも、スマートな感じはあんまりなくて、土の匂いがしてくる錯覚を感じるくらい泥臭いのがいいです。あと魅力的なおじさんがいっぱい出てくる。魅力的な壮年を描ける人は漫画が上手い人だなと思います。
ガチアクタ
https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000365342
現行の三大少年誌の漫画で買ってるものってあんまりないんですが、ガチアクタはそんなうちの一つです。
僕はパキッとした線を引く絵が大好きで、例えば王ドロボウJINGの熊倉裕一先生とか、ism/iの空十雲先生とか、AKABOSHIの天野洋一先生とか、あとイラストレーターだとすばらしきこの世界の頃の野村哲也先生が好きなんですが、その路線で2022年に漫画を描く漫画家が出てくると思わなくて、嬉しさのあまりよだれをダラダラ垂らしながら読みました。
話やキャラクター設定としてはかなり王道なんですが、ガラ悪い世界観にベストフィットしているクールなキャラクターデザイン、グラフィックのデザインなど、ストリートカルチャーがモリモリに詰め込まれてて愛のある漫画だなと思います。
絵力がすごくてグイグイ引き込まれるシーンも多く、少年の気持ちでワクワクしながら読めます。オススメ。
霧尾ファンクラブ
https://j-nbooks.jp/comic/original.php?oKey=260
切れ味のあるぶっ飛んだギャグ漫画を武器にTwitterでバズりまくっていた、地球のお魚ぽんちゃん先生がついに長期連載を始めたわけですが、案の定めちゃ面白かったです。
ギリを下品に攻めるギャグなのになんかサラッとして淡白なタッチの絵柄とのバランスで、不思議とあっさり読めてしまう、でもやっぱおかしいでしょこれ???という気持ちになる「節」が遺憾無く発揮されてて、ネタが尽きないのすごいなと思いました。
短編だからぶっ飛ばしてるもの描けるのかなと思ってたところ、ワンテーマの連載でもずっと面白くて感服の気持ちです。
2年1組 うちのクラスの女子がヤバい
https://to-ti.in/product/erisawa
もともとトーチでこの前作にあたる1年1組〜を連載していたので、厳密には今年の新作ではないかもですが、まぁ1年1組〜の新装版も今年出たということでいいんじゃないでしょうか。
特に生活で役に立たない「無用」な超能力を持っている女子が集まるクラスで、超能力を中心に巻き起こるドタバタを描いた学園ものなんですが、ひとりひとりのキャラ設定がすごくしっかりしていて、なんならひとりずつ制服が違うところとかすごく作り込まれていてグッときます。キャラへの愛を感じられる作品っていいですよね。
群像劇をまとめ上げるのって大変だと思うんですけど、単話の中でそれぞれの生徒の掘り下げをしながら、回を重ねるごとに今までに出てきた生徒もしっかり話に絡んできて、読み進めていく中でどんどんクラスとしての立体感が増していくのが、すごく丁寧に描かれてるな〜と嬉しくなります。
ゆるめの絵柄なのも各キャラクターに愛嬌があってグッドです。めちゃくちゃ高校生の頃に戻りたくなった。こんな高校生時代などなかったというのに。
光が死んだ夏
https://web-ace.jp/youngaceup/contents/1000183/
これも学生の話。この作品のすごいところは、多感な時期の少年2人の友情あるいはそれより一歩踏み込んだ先の感情のやり取りが、その一方が死んでしまった後の世界で描かれるところにあると思います。
それはもう既に果たされない感情になってしまっているけど、でもその相手は違う中身になって今も彼の見た目のままで生きている。ホラーまで行かないくらいのドロっとした妖しさと若さの輝きとが高い水準でせめぎ合っていて、この漫画にしかない世界観がしっかり打ち立てられているのがグッと来ます。
音楽の話で「新しいジャンルというものはもうほぼ生まれることはなくて、これからは既存ジャンルの組み合わせで新規性を提示していくのだ」みたいな話があるんですけど、漫画も近いラインに来てると思っていて、それをホラー+青春で実現しているのがすごいなーと思っています。
生活保護特区を出よ。
https://to-ti.in/product/mantra-arya
トーチってWeb漫画のサイトがあるんですけど、創刊以来一貫してエッジの効いた漫画を連載し続けていて、それでお金を生み出し続けているのが本当すごいなと思ってるんですが、この作品もそんなトーチの中の一作品。
主人公はもともと平凡な学生だったのだけど、「お前は人並みにやっていくことができない」という判定を社会から下され、社会に入れなかった人たちが送られる場所、生活保護特区に送られるっていう始まりがかなりシビア。でも送られた先は今までと全く違う世界が広がっていて、みんな後ろ傷や何かを持ちながらも文化を築いて暮らしていて、一つの美しさを体現している。でも結局それは、真綿で首を絞めていくような、緩やかな死の集まりで生々しくて切ない。
定められた破滅に向かってトロッコは進んでいるんだけど、それを直視せずに現在を見て生きている。フィクションの中で語られるにはあまりにリアルなんですけど、それを嫌な気持ちにさせずに読ませる漫画としての引力があるのが、この作品の魅力だと思います。
猫のまにまに
https://www.kadokawa.co.jp/product/322201000700/
ここまでちょっとジトっとした作品が続いてきたところですが、一転して、猫のまにまにです。とにかくスイーッと読める気持ちよさがいいですね。猫又に押しかけ女房されてる文筆家の二人暮らしを描く日常系って感じなんですけど、猫又の金子さんが可愛くて和む〜。
猫又は歳をとるほど人に化けた時の見た目が若くなる、という謎設定のおかげでロリババアばっかり出てくるのがフェチを感じていい。金子さんのファッションが綺麗系のお姉さんって感じなのにも並々ならぬこだわりを感じる。重たい漫画読みたくないときもあるからこういう美味しい山の空気みたいな漫画ってありがて〜って感じですね。
ことり文書
https://www.kadokawa.co.jp/product/322201000704/
同じく美味しい山の空気枠。ハルタとか青騎士ってそういう漫画が多くていいですよね。あとみんな絵が綺麗。
おてんばで箱入り娘な中学生、小鳥とその執事になった生真面目な青年白石の二人が過ごす日常を微笑みの感情で見守る壁になりましょう。これを読んでいるあなたは壁。
漫画の中を通じて一切の邪気が払われていてとにかく純粋さだけがキラキラ輝いており、ずっと空気がうめ〜。
少女漫画っぽい繊細なタッチからちょっと崩したデフォルメまで、絵柄が安定して可愛い。とにかく浄化された気持ちになる。ことり文書を読んで子どもに挨拶とかする大人になろう。
異世界人生劇場
https://yawaspi.com/isekaijinseigekijo/
ka92先生はTwitterに投げてる短編漫画がどれも面白くて、異世界人生劇場の連載が始まってからはずっと単行本が出るのを楽しみにしてたんですが、ようやく出たので嬉しい。
エビフライしか操れない死霊術師とか、エリザベスカラーつける魔族とか、そんなん思いついたらもう勝ちじゃん!みたいなキャッチーな設定がミチッと詰まっていて一冊の満足感がすごい。輪郭太めでトゥーンな感じの絵柄もショート短編の連作って形態にあっていて良きです。今更異世界もののファンタジーで新規性を狙いに行くようなものでもないと思うし、逆に色んなテンプレがみんなの頭の中に浸透してきた今にちょうどいい。あるあるとなしなしの境目で反復横跳びしながら笑わせてくれるおもしろ漫画です。とりあえず一巻買って、そういうのが欲しくなった時にちみちみ読むのにいいと思います。ニーズにドストライク。
まとめとおまけ
以上、今年の良かった漫画10作品でした。どれも面白いので気になったのから読んでみてください。
漫画買うの楽しくてどんどん買ってたら新刊をダブらせることがたびたび起き始めたので、今年から買った漫画の記録をアプリで取ってるんですが、これ結構良いです。今までもこういうブログを書こうと思ったことはあるけど、結局どれが今年読んだ漫画が分からなくなって諦めたこと多々ありなので。ちなみに僕は新刊リマインド用としてReadee、月ごとの購入冊数とか数値の記録用としてYomooの二つを使ってます。
今日の時点で今年買って読んだ漫画は大体100冊くらいらしい。まだ積んでるのとか奥さんが買ったやつ読んだのとかもあるから大体月10冊くらい読んでる計算?
100冊読んだら10冊くらいオススメしてもいいと思うんですけど、どうです…?
ちなみに紙で買った漫画しか数えてないです。そもそもほぼ電子で買わないし、単行本派なので連載もリアルタイムで追ってないし大体全量かなぁ。
最後に、「今年1巻出た」という条件からは外れたけど今年読んで特に良かったな〜と思った漫画を挙げておくのでこれもよければご参考に。
一年お疲れさまでした。来年もたくさん漫画読むぞ。
【近況報告】北海道は飯がうまくて最高
どうも、お久しぶりです。
また前回から半年ぶりとからしい。
前回仕事でなかなか階段が登れなくて大変で、次の評価で登れなかったら転職も考えるわみたいなこと書いてたんですが、無事一段登れたのでまだ今の会社にいると思います。でももっとお金が欲しいので頑張ります。
さて、そんなわけで体調的には割と良いのでわざわざ書くことがない最近なんですが、なんとなく思い立って北海道に旅行に行ったのでそのメモです。
アブスト
夏前くらいから割と体調も戻ってきて、フジロック行ったりライブ行ったりキャンプ行ったりと、色々アクティブに動けているこの頃なんですが、9月はせっかく連休もあるし、最近遠出してなかったからなんか飛行機に乗るような距離の旅行がしたいなーと思い立ったのが確か8月下旬。
そっからわーッと勢いで飛行機を抑え、1泊2日で札幌周辺と旭川を巡る弾丸旅行が決まったわけです。
自分も奥さんもとにかく体力が無くて、2泊以上の旅行は気持ちが切れるため出来ないという制約から、1日目の早朝の飛行機で新千歳につき、2日目最終便で成田に戻ってくるという1泊2日ギリまで詰め込むプランとなりました。
朝の便は安いけど夜の便はめちゃ高かったので、特に我々みたいな制約がない人は2泊して朝帰ってきた方が色々いいと思う。
デカい動きの翌日はクールタイムを挟まないと動けないので、今日は仕事休みとって万全。
まず結論からというところで、北海道はめちゃくちゃ良い旅先だなと思いました。
今まで二人で行く旅行はやれ和歌山だ、那須塩原だ、伊豆だ、勝浦だととにかくTier1の観光地を避けてきたきらいがあり、家からのベストな距離感とローカルな雰囲気あるところでまったりしたい気持ちベースで動いてたわけですが、それらの旅行ももちろんいいんですが、今思うと一つ不足していたものがあったんですね。
それが食です。今までの旅行は大体食事付きの宿が多くて、宿で美味しい食事というのも全然良かったんですが。
今回北海道に行くにあたって違ったところとしては、事前にインスタで友達からおすすめのグルメ情報を募ってそれをベースに色んなご当地感のあるご飯屋さんを回ったというところでした。
結果として大満足でした。どこどこに行ったみたいな思い出って、視覚聴覚をベースに構成されるものでちょっと脳に焼き付きにくいなと思うんですが、ここに味覚の情報がビシッと入ってくるだけで旅行が非常に色彩豊かなものであったような感覚を覚えられるわけです。
いつもは変な逆張りをして、人気店はあえて避けるみたいなムーブをすることが多いんですが、今回は並んでもいいからちゃんと人気店を押さえるという動きをしまして、これも上手くハマったなと思いました。
それが観光客向けの店であっても、やっぱり人気店には人気店の理由があるわけで、変な外し方をしないのがいいですね。
ではそんな感じで、旅行の話をダラダラしていきたいと思います。
1日目(千歳〜支笏湖〜旭川)
行きは8:20成田発の飛行機なんで5時起きとかでスタート。Springを初めて使ったんですが、機内のシートとか色々なデザイン的なものがLCCだなーって感じで、若干気持ちの疲れを感じたところでした。帰りはJetstarだったんですが、Jetstarはなんか精神的に圧迫感を感じさせないデザインされた空間になってて、同じLCCでも全然違うなーと思ったところです。ほぼ価格帯も同じなんで選べるなら今後はJetstar使うかなーと思いました。
あと、Jetstarはモバイルチェックインできるのが良いんですよね。楽だからいいっていうのもあるし、スマホのWalletに航空券が入るの、旅の思い出って感じで好きです。
新千歳には10時過ぎ着です。
1日目は支笏湖に行きたいなーと思っていて、それベースに旅程を組みました。
支笏湖は千歳市内からバスで40分ほどのところにあるカルデラ湖で、日本有数と言われている透明度を誇っていることで有名です。という情報を社内で月一で放送される情報番組みたいなので同僚が喋っていて、こりゃ良さそうだと思い行き先にリストアップしたわけです。
まずは空港から千歳に移動し、予定のバスまで1時間半ほど時間があったので、サケのふるさと 千歳水族館へ。
1時間弱で回れる程度のこぢんまりとした水族館なんですが、北海道で見られるサケ・マスに展示のメインを絞っていて、魚の状態も良く、質のいい水族館だなと思いました。
また、目玉が水族館横を流れる千歳川の水中を見られる水槽なんですが、今がまさにサケの遡上シーズンで、モリモリとサケが泳いでいるのが見れたのがかなり良かったです。
雨で濁った川をモリモリ泳ぐサケ
12時半ごろには支笏湖に着きました。割と山奥のイメージがあったけど、ほとんど市内と標高は変わらない感覚で、道のりのほとんどが森の中を突っ切る真っ直ぐな一本道でした。ここら辺は北海道っぽいですよね。窓の外の風景が突然ミズナラ林から白樺林に変わったところがあって、「うぉ〜北海道来たな〜〜」となりましたが、白樺ってなんかエモいですよね。
支笏湖はカルデラ湖で、一般的なカルデラ湖のイメージに漏れず貧栄養湖です。貧栄養だから微生物の発生も少なく、水の透明度が高いわけですね。それは裏を返せばそこに生息する魚も限られるというわけで、実際に人の手が入るまでの支笏湖はアメマスなど限られた魚しか生息していなかったようです。それが人の手が入り始めたことでヒメマスをはじめとするさまざまなサケ・マス類が移入され、今や当地の名物はヒメマスになりました。
というわけで、現地でいくつかのお店を周り、一番ヒメマスのしっかりした料理が食べられそうな店でヒメマスの刺身と塩焼きを食べました。
御食事処 寿 の姫ます定食
これがかなり美味しくて、内蔵も丁寧に処理されていて食べやすくほろっとした身にしっかり塩が効いた焼き、小ぶりながらもサーモンよりもトロッとしたようなコクのある身質の刺身も素晴らしかったです。
ちなみにこの店は天然のヒメマスを使っているそうです。そもそも貧栄養湖なわけですけど、そこでの天然物と養殖物、栄養状態がいいのはどちらなんだろう?と思ったけどまぁ美味しいのでどっちでも良いです。天然という言葉に何かしら惹かれるものがあるのもまた事実ですし。
サーモンのようなという話をしましたが、ヒメマスとはつまるところサーモンです。これはベニザケと同種で、海に降りるものはベニザケ、淡水で一生を終えるものはヒメマスと呼称します。サケ科の仲間はこの手のものが多く、ヤマメとサクラマス、アマゴとサツキマスなども同じ手合いです。大体の特徴として淡水で一生を終えるものは小型になります。
ならサーモンと同じじゃんという話になるかもなんですが、これは是非食べてみて違いを感じて欲しいです。サーモンとは違った繊細さがあって非常に美味しかったです。
食事を終えた後はバスまで時間があったのでダラダラとビールを飲みながら天気の悪い支笏湖を眺め、時刻はおよそ15時半。
天気が良くて風がなければ絶景だったんでしょうねー。とはいえ湖を囲む山々も一望できて気持ちが良かったです。
お土産に木彫りのくまとムックリを購入して、バスに乗車。お土産屋が大和という名前だったんですが、アイヌ文化のお土産品も売っているような店で大和という名前を掲げるのはなんというか…という感じがしますね。しませんか?
ここからは千歳→札幌→旭川と移動。札幌→旭川間で特急1時間40分とかでもはや東京名古屋間の新幹線レベルですよね。1泊2日で行くのはやめた方がいい。
19時ごろに旭川に着いて、夕食は友達から勧められていたジンギスカンの有名店大黒屋へ。並ぶと聞いていたのでビビりながら向かうとなんとまぁ、80組2時間待ち。幸い店から離れても良かったので近くのホテルで待つことに。
今回あんまり宿にこだわりがなかったんで、ベタなとこ行っとくかということで星野リゾートに泊まったんですが、エントランスも部屋の内装もこだわりがあって結構体験として良かったです。家族連れが多くて、確かに家族で泊まりやすくて良い体験できるリゾートホテルとしてベストに近い選択かもなーと思ったり。これが令和のリゾートホテルか。
エントランスでパフェが頼めたんで、ウェルカムドリンクのシャンパンなど飲みつつ待ち。
綿菓子が乗っていてファンシー
ちなみに北海道はシメパフェという文化があり、飲み会終わりにパフェを食べるらしいんですが、このパフェもその類のもので、とてもさっぱりしていて食べやすくちょうど良かったです。これから食べ飲みするのにシメとはという話は置いておいて。
ダラダラしてたら時間になったのでお店へ。ちょうどいい時間につけたのでほぼ待ちなく入れてグッド。ジンギスカンオンリーで品数も多いわけじゃないけど、さっぱりとしながらもしっかり肉の味があり、ヒレなんかはジンギスカンの風味も嫌味なくしっかりしていてなるほど人気店なのも頷ける味でした。正直最近サシの多い牛肉がしんどくなってきたので赤身が美味しいジンギスカンっていいなーと思いました。都内でもこのクオリティのが気軽に食べれたらいいのに。
店への行き帰りで夜の旭川をぶらついたんですが、24時ぐらいまでやっているような喫茶店が何軒もあったり、クラブくらいの爆音を扉開けてぶっ放してる無鉄砲なバーがあったりと、色々空気感の違いを感じられて良いです。街は夜歩くのが面白いですね。
さて、あとは風呂入って寝るだけって感じですが、旭川の星野リゾートはサウナが推しらしくちょっと期待。してたわけですが、予想よりしっかりしていて満足度高〜って感じでした。
サウナ自体は一般的なミストとドライなんですが、ぬるま湯よりちょい冷たいくらいで腰上まである広い立ち湯があって、サウナ→水風呂の後で立ち湯でぼんやり漂うだけでしっかり整えて気持ちよかったです。
地下なので窓とか屋外の整いスペースとかないんですが、入った時間も良くて人も少なかったんで、シンプルに自己と向き合って整う!って感じで没入感あって良かったです。
逆にサウナ全振りな感じであったかい風呂は数人分のスペースしかないので、そういうのを求める人にとってはちょっと違うなとなるのかも。割り切って楽しむ分には良いところだと思います。地味に自販機にオロナミンCとポカリが並んでいてオロポ作れるのも抜かりないなって感じでした。風呂場に置かれてるフレーバーウォーターも美味しい…。
2日目(旭山動物園→札幌→帰宅)
さて、2日目ですがまずは朝食。スクランブルエッグとかウインナーとかよくあるものはよくある感じのクオリティでしたが、ちゃんとウリのメニューとして、サーモンを乗せたワッフルと山わさびのローストビーフ丼があってそれぞれ美味しくて、抜かりないなーと思わされました。
特にチーズクリームを添えたサーモンのワッフルがめちゃ美味しかった。マックグリドルみたいな塩っぱいものと甘いものの組み合わせが好きなので刺さった感じありましたね。
そんなわけで旭山動物園へ(ほぼメイン)。
めちゃ広いってわけではなかったと思うんですけど、しっかりいて欲しい動物はいて、心なしかどの動物もイキイキしていたような。子供のシロクマがおもちゃではしゃいでいるところとか、でっけートラが練り歩く様とか、大胆にも頭上でまったりしているユキヒョウなどが見られて楽しかったですね〜。トラ近くで見たことあります?マジで、でっけ〜〜〜〜ってなりますよ。
普段見られない画角のユキヒョウにはしゃぐ人たち
動物が人目につきやすいような工夫が展示にされているような気がして、見る側としては楽しく見られました。随所に掲示されている、おそらく飼育員さんの描いたパネルも可愛い絵が多くて愛を感じるし、札幌からのアクセスを考えると結構大変だけど、行く価値はある場所だなと思いました。
原寸大アザラシパネル なぜアザラシを一覧化しようと思ったのか
さて、もうお昼も回っちゃったわけで、旭川での目的は果たしたので仕上げに札幌へ。
到着は16時ごろ。大黒屋と同じく友達からのレコメンドの多かったスープカリーキングへ向かいます!
北海道のグルメと言えば、ラーメンとスープカレーな気がする。学生の頃札幌行った時はsuage+でスープカレー食べて大層感動したんですが、今回のスープカリーキングはそれを上回る感動でした。
スープカレーはスープを何で組み立てるかが命だと思うんですが、ここのお店は和出汁に加えてゲンコツと鶏ガラのWスープなのがアツかった。スープカレーとはいえカレーなんで、トマトベースのスープを使っているところが多いイメージですが、白濁系の動物スープで仕上げたスープカレーはここが初めてでした。いやこれがマジで美味くて…。悲しいことに北海道にしか店がないのでぜひ札幌とか行く機会がある人は食べて欲しい。次行ってもまた食べる気がする。
余裕があったら北大でも散策するかと思っていたんですが、思ったより日暮れになっちゃったんで、一応農学徒のはしくれとしてささっとクラーク先生の胸像だけ拝み空港へ。
普段お土産ってほぼ買わないんですが、北海道はおいしいものが多いんでとりあえず一通り押さえ。
北海道入門キットって感じ
そんで飛行機!成田に着いたのが22時半ごろ。電車乗り継いでほぼ終電にて帰宅で旅行終了!
美味しいものだらけの土地の旅行は最高やなと実感したところで今日はこれまで。
飛行機乗るくらい遠出するとおいそれと帰れない感じが逆に旅への没入感を高めてくれて良いなと思いました。
5000字!?誰がここまで読むのか、ではみなさん、また次の更新で。
雑な個人情報保護
【近況報告】それなりにやってると思います
どうも、お久しぶりです。
はてブを開くこと自体かなり久しぶりで、僕のiPhoneはあんまり容量がないんで、あんまり使っていないアプリを消していく機能をオンにしているんですが、なるべくしてこのはてブアプリも消されていました。おかえり。
前回ブログを書いたのが6月で、読み返してみるとまだかなりもがいてる時期だったなーと感じました。今ももがいてるんですけど。
さて、それから8ヶ月経って、今どうなのか、という話をそろそろしとくかというわけで、書いてみます。
正直言って2021年の記憶ってあんまりないんですよね。なんかずっとぼんやりとした閉塞感に覆われていて、あんまり楽しかったこともなかったような、そんな感じなんですけど。
それってなんでなんだろうと考えると、結局はコロナなんですよね。2020年はもうめちゃくちゃコロナで締め付けが厳しくて、でも逆にその締め付けの中でみんなある種の平等な苦しみを味わっていたというか、一体感があった感じがしたんですけど。2021年はそこの締め付けが限界を迎えてはじけた結果、飲み屋が営業を再開したり、フジロックが開催されたり、色々動き始めたことは多かったと思うんです。でもそこの中にいつも見えるのはマスクをした個人の姿で、結局のところ社会システムで対応しきれなくなった尻拭いを個人がやってて、個人の裁量に全て任されてたんですよね。それってともすればかなり精神的労苦を伴うことで。結果として僕は精神的に結構圧迫されてたなと思いました。
そんな中でもいくつか楽しかったことはありました。
一つは友達の猫を堕ろすのMVを一緒に作ったこと。
ときめきリサーチ200X / 猫を堕ろす 【Official Video】 - YouTube
ワクチン打ってフラフラだという薫人を引っ張り回して、ビデオ撮った澤田も名古屋から自分の車で来て、みんなでわちゃわちゃスタジオ借りたり、中野坂上の路上で猫の被り物したり、かなりタイトなスケジュールでやったんですがこれはマジで楽しかった思い出ですね。猫人間って、なんなんですかね?
あと他に特に覚えてるのはこれもまた猫を堕ろす関連なんですけど、一緒にアルバムのリリースツアー回ったことですね。
名古屋編ではレンタカーで向かったはいいものの渋滞巻き込まれて、仕方なく猫メンバーを小田原で新幹線に乗せ、僕と寛人の2人で名古屋まで車を走らせたわけですが、クソ辛くて空気階段のラジオ流しながら完全に死んでた箱根の下道のこととか、帰りみんな変なテンションになって全てのSAに寄りながら帰ったら往復15時間くらいかかったこととか。
大阪編は新幹線で遊びに行ったんですけど、ライブまでの時間で京都行ってサークルの友達と久しぶりにゆっくり話せたり、そのあとみんなでライブ観に行ってあまねくんのライブに大感動したり。その日着てたバカみたいなチャイナ服をあまねくんに着せたらめちゃ似合ってたのでそのままあげたり。
さらに僕はその足で地元に戻ってじいちゃんの葬式に出たり。感情が目まぐるしかったですね。
そして大団円の東京編もライブでも、サークルの先輩が遊びに来てくれたりして、またみんなであまねくんのライブで爆踊りしたり、名古屋→大阪→東京とどんどん気迫を増してく猫のライブをニコニコしながら見たり。
これが10月、11月くらいで結構この時期メンタル終わっててボロ布みたいな状態だったんですけど、友達と一緒に楽しいことする、という一点だけでなんとか乗り切った感じでしたね。
あとはこれくらいの時期にキングオブコントで空気階段が優勝して、それを祝ってサークルの同期3人で昼間から終電なくなるまで高円寺で飲みまくったのも楽しい思い出ですね。
年末にかけては、奥さんと伊豆の猫と戯れられる宿に泊まりに行って、絶対いつか猫飼うぞという気持ちにさせられたりしてました。
あとは大好きなイラストレーター、PANAPANA先生の個展行って、パネルを買ってきたってツイートしたらなんか知らんけどやたらいいねされたり。
年末は10年ぶりくらいに実家の餅つきに参加して、久しぶりに従兄弟全員と顔合わせたり、奥さんの顔合わせみたいなこともしたりして、名古屋で小林を偲ぶみんなで久しぶりに集まって飲んだり。
あー、点で思い出すと意外と楽しかったことあるなー。でもやっぱり2021年のキーワードは閉塞感でしたね。
じゃあ直近どうなのかという話なんですけど、端的に言うと一回ド沈みして跳ねっ返りで今頑張ってる、って感じですかね。
仕事の話になっちゃうんですけど、そもそも論として、僕はずっと成果主義が正義だと思ってたんですね。成果を出し、それによって評価されることは非常に正当性があって平等な原理だと思ってたわけなんですけど。
この大原則がウツになって完全に壊れちゃったんですよね。なぜなら頑張れないから。成果が出せない側に回ると成果主義ってめちゃくちゃ残酷に見えるんですよね。競争社会マジで怖いよ。
まぁ仕事なんで、一定スパンで評価というものがあるじゃないですか。僕去年の評価ダメダメだったんですよね。まぁ半分くらいウツで働いてなかったし、働いても全然パフォーマンス出せてなかったし仕方ないんですけど。でも、仕方ないなりに頑張ってるのにやっぱ評価されなかったから現実って辛いな〜ってなっちゃって。でも一個希望があって、去年一年の評価は頑張れなかったけど、でも階段は一段登れるかもしれないからそれ目指して仕事頑張ろーぜ!みたいなことを上司に言われて、それを心の拠り所にしてなんとか年末年始やってたんですけど、ダメだったんですよね、登れなかったんです。
そもそも振り返ると2020年くらいからなんか歯車が狂い始めてて、2020年の僕は結構頑張ってたんですけど、はじめての対クライアント業務でまだ成果の再現性が取れないから階段登っちゃダメって言われちゃって。ホットな話題で言うとハーフパイプで平野歩夢が決勝2本目最高難度をミス無しで決めたのに評価が伸びなかったみたいな感じで。いや、並べるのは自己評価高すぎかな?
あれも多分もっと見たいからまだ評価しない、みたいなのがあったんじゃないかと思ってて、そんなのはM1の審査だけでいいよとか思ったんですが。それで2021年何とかやるかと思ってたら歯車が狂いまくってウツになって今に至って。で、その間に周りの人は着々と階段を上がっていったわけなんですよね。
もし2020年の評価の時点で階段上がれてたら、僕はまだ先行者の立ち位置を取れていて、それって自分にとってものすごい自信になってたと思うんですよ。でもそれも叶わずそれどころか周りのみんなと一緒に走ってた道を転がり落ちちゃったわけです。
これがめちゃくちゃ堪えて。もう焦りまくりって感じで。で、だからこそ、2021年末に目の前にぶら下げられた、階段上がれるかもよ人参はマジで涎ダラダラな餌だったわけです。
でも、そのために何を頑張ったらいいかもわからないし、そもそもまだ頑張れない気持ちの重たさがあって。まぁある意味当然なんですが、登れなかったんですよねー、階段。
これがマジでキツくて、それを知らされた日はボロボロ泣いて翌日は半休取って不貞寝したわけなんですが。
まぁ階段を登れなかった理由も色々あって、自分も成果出せてなかったし、なんか僕をプッシュしてくれる周りの大人の連携が全然うまくいってなかったりとかもあったりして。まぁとにかくいろんな原因があって、悔いが残る結果になったわけなんですけど。
でも逆にというか、この悔いしかない結果にめちゃくちゃケツを叩かれたことによって、なんか知らないけど仕事に対する前向きさが帰ってきたんですよね。次の階段登れるタイミングはマジで獲りに行くし、そのために万事尽くして天命待つくらいにやり切らないとやってられないなと思えてきて。次階段登れんかったら転職も辞さんくらいの勢いが今あります。会社のことかなり好きなのに。
で、まぁ結論として今は割と前向きに変わってきていて、薬も飲む量減らしてみたりとか、色々プラスの要素が身の回りに起き始めてきてます。
そんなこんなで、なんとか持ち直し始めた2022年、やってくぞって感じになりつつあります。
ただ、今日上司と面談した時に、仕事に前向きになってきている、変わってきているみたいな感じで褒められたんですけど、その褒められたこと、ウツになる前は全部できてたことなんだよなーと思ってしまい、病気って最悪!と思いました。引き続き戦っていきます。
ではまた。3600字も読んでくれてありがとう。