MFT#025 『The West Wing』Edward Gorey

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アメリカの絵本作家、エドワード・ゴーリーは緻密な線画と残酷ながらひょうきんさが見え隠れする不可思議な魅力を持った絵を描く。僕がゴーリーの絵本に出会ったのは、AからZまでのイニシャルを持つ子どもがそのイニシャルに因んだ死に方をしていく様を描いた『ギャシュリークラムのちびっ子たち』で、絵本=子ども向けという僕の矮小なイメージを拡張してくれた作家である。その細密な線に惹かれ、なおかつ絵本特有の所有欲を満たす装丁も手伝い、Amazonで何冊か買って読んだ。英語で読みたかったので英語版を探して買ったのだけど、訳者の日本語訳も原典の読み味を損なわず秀逸なので日本語版を読むのも良いと思う。彼の作品数はその緻密な作風を裏切り非常に多く、後年ペーパーバックにその仕事をまとめた『AMPHIGOREY』も刊行されている。こちらもお得に読めて読み応えがあるのでおすすめ。でもこれは英語版しかないかも。

 

彼の作風は日本人にも大きく影響を与えていて、漫画家の西村ツチカ氏や、イラストレーターの飯田愛氏などがその例かと思う(僕の主観による認識ではある)。展示の巡回もよくやっていて、日本人とどこか根っこの相性がいい絵なのかもしれない。

 

さて、そんな彼の著作の中でも僕が好きなのがThe West Wing。とある物寂しい洋館の一部を一枚一枚切り抜いただけ、文字もない淡白な絵本だが、その一枚一枚に潜むそこはかとないホラーさが想像力を掻き立てる、味わいのある作品。

途端に僕自身の話になるが、僕は人生の命題として、「自分の中のチェックボックスをなるべくたくさん埋める」ことを掲げている。そんな中の一つに、「〇〇のジャンルについて××が好きと言えるようになる」というのがある。好きというためには最低限自分の手元に置いてその魅力を自分の言葉で語れる必要があると思っていて、興味がある様々なジャンルのものを買い集める性質が僕にある。そんなわけで、好きな絵本作家は?に対してはエドワードゴーリーと答えられるためにも著作を集めた。まぁ数冊だけど。この手のデッキは多分人生で一回使うか使わないかだけど、使えたときめっちゃ気持ちいいので貯めておくに越したことはない。

 

 

ちなみにゴーリーは無類の猫好きでたくさんの猫と暮らしており、猫に関するイラストも多い。そんなうちの一つをあしらったTシャツを巡回していた展示で買い、ニコニコで日々着ていたのだけど油の染みが取れなくなってしまい一軍落ちした。これはとても悲しい話である。

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