2019年の生活を振り返る(後編)

2019年も後半に差し掛かっていくわけなんですが、まず最初の出来事は引越しにより広い家に住めるようになることでした。前編でも書きましたが、露骨に生活範囲が被る空間に二人の人間が住むというのは、実質ずっと肩がぶつかり合っているようなもので、知らずにストレスを抱えてしまいます。

そんなわけなので、1LDKという二人が暮らすに十分な空間を得たことによって、今まで何をするのでもベッドをソファーがわりに使っていた生活から脱却し、僕らの生活には確かな「暮らし」が生まれたように思います。明確に日々の生活におけるフェーズごとで使う部屋が分かれ、お互いの生活に摩擦が減りました。あとは単純にスペースが増えたことで、これまで空いた空間に配置するしかなかった様々なモノの居場所が生まれ、整然とした空間が形成されました。結果、二人の生活リズムの異なる人間が同時に暮らせる空間が生まれたのです。

こんな感じで、生活に明確な質の向上を与えてくれた引越しでしたが、一つだけ大きな問題があったのです。それがインターネットです。

そもそもこの家の懸念点の一つとして、光回線が部屋に引かれておらず、部屋ごとに回線業者と契約し、管理会社に図面等を送り許可をもらった上で回線を引き込む、というシステムがありました。とはいえ、令和にもなって、しかも首都東京な訳だし、よっぽど大丈夫だろうと思っていたのですが…。現実はそうも行かなかったのです。

そもそも、引越しが急だったのもあり、引越し先に回線業者が来るのが引越してきてから一月後とかで、開始からすでにポケットWifi生活を余儀なくされていたわけです。まぁこればかりは仕方ないという気持ちでいたわけですが、回線引き込みのために家に来た業者から不穏なことを聞かされます。「この部屋には、電柱から直接回線を家に引き込む以外に方法がない」というものです。一般の集合住宅では、マンション全体のターミナルとなる機器がどこかに設置されており、そこから壁面内のパイプを通して部屋ごとに光回線を延長する、というパターンが多いらしいのですが、僕の新居には壁にパイプが埋め込まれておらず、壁の中を通す方法が使えないというのです。

というわけで、電柱から引き込むしかなくなったわけなのですが、ここで次の問題があります。管理会社から、「壁に穴を開けるような引き込み工事は不可」との通達が来ていたことです。結論から言うと、ここが壁となり、最初の回線業者では引き込み工事ができませんでした。

この時点で入居からひと月近くポケットWifi生活でまぁまぁ疲れがあったのですが、他の回線業者なら状況は変わるかも、ということで、壁に穴あけせず粘着テープを使って工事する、と説明にあったNURO光を申し込んでみました。しかし残念ながらNUROの工事も僕の家の壁面では穴あけする以外に手段がないと言われ断念。この時点で引越しして二ヶ月。日々ゲームオブスローンズを人の顔がギリ判別できないくらいの画質で見ながらポケットWifiへの憤りを募らせる日々。戦場で炎が燃え盛るたびに画面がボロボロになり再生がストップする様を見ながら、頑強な回線の必須さを痛感する日々でした。

ここでかなり疲れてしまったので、一旦回線引き込みは諦める方向に切り替え、仲介会社から契約時の説明内容との相違を盾に、仲介手数料くらいは返してもらえないか交渉する方向に切り替えることにしました。入居時に聞いていた話と違う(光回線の引き込みは可能であるとの触れ込みだった)、自分は仕事で家でもネット環境が必須なので困る、という苦情を仲介会社に送り、管理会社にも今時生活に必須のインフラなのに引けないとはどういうことかと苦情を入れ、なんとか打開策はないかと交渉を続けましたが、結局誰が何を言ったか言わないかの議論から先に進むことはなく。(何か交渉ごとの時は必ずメールで決めた内容などは送ってもらい、形に残しておくべきです。もしくはそもそも電話でのやり取りをしないことを勧めます。)

俺は一生光回線の恩恵を受けられないのかと絶望していたところで思い立ったのが、入居しているマンションを所持している不動産会社のネットサポートでした。藁にもすがる思いで連絡を入れたところ、従来の光回線業者(NUROやauひかりでない)ならあるいは可能かもしれないとの返答。これで言質はとったなと思いながら、三度目の正直でソネット光を申し込むことにしました。

三度目の正直とはこのことで、ここで来てくれた引き込み業者が、壁に穴を開けずに、電線からうちのベランダまで(距離にしておよそ15m)光ファイバーを無理やり引き込む、という空中殺法を行ってくれ、なんとかうちにインターネットは開通しました。これが9月下旬。実に入居してから三ヶ月の戦いでした。今後引越しする人には以下の2点を頭の片隅にでも置いておいてほしいと思います。

  • 都市圏でネットを引くなら1−2ヶ月は待つと思った方がいい
  • 部屋に直接回線を引き込む場合、引き込み業者が指定できず、業者によって対応内容にかなり差があるので祈るしかない

と、こんな感じで2019年後半最初の大きな出来事はネットの引き込みでした。

また、ちょうど9月くらいから、仕事に大きな変化がありました。今まで関わっていた案件が全て8末で終わり、実質無職になってしまったのです。とはいえ、僕は会社に雇われの身なので、毎日出社して、何かしら仕事の役に立ちそうな勉強をして帰る、というルーチンを繰り返さざるを得ませんでした。まぁこれによって得るものがなかったわけではなく(いくつかのプログラミング言語の基礎とエクセルのマクロを組む技術を習得できた)、お金もらって勉強させてもらえるなんてなんと贅沢か、という話でもあるとは思うんですが、この期間は他者からの承認が得られない、僕にとっては酷く苦痛な時間でした。結果としてこの期間は二ヶ月程度で終わるのですが、その間に僕の気持ちはどんどん落ち込み、いわゆる鬱に近い症状を呈し始めました。

決定的だったのは、ある日鍵を持たずに会社に向かい、家に帰って来るまで鍵を持っていなかったことに気づかなかった、という出来事でした。家に帰って、鍵を開けようとして鍵がないことに気づき、部屋の前で完全に力が抜けてしまい、自分のあまりの注意力のない虚脱した生活ぶりにかなりの絶望感を覚え、しばらく立てなくなってしまいました。

この時、明確に自分の生活に輪郭を取り戻す必要性を感じ、心療内科をすぐに予約、受診しました。そこで、忙しい日々が続いた後の急な平穏に気持ちの落ち込みが重なる「引越し鬱」という症状を教えてもらい、薬をもらいました。スルピリドという錠剤です。何度か通院して量を調節しつつ、最終的にはこれを毎食後1錠ずつ飲むようにして、なんとか谷は抜け、生活に輪郭が戻ってきました。そして、11月なかばに新しい仕事をもらい、生活にもメリハリが出てきたことで、薬も飲まなくて済むようになりました。最も今、また無気力と漠然とした悲しさの波が大きくなってきたので、通院を再開したのですが…。しばらくはこの気持ちのダイナミクスと付き合う必要がある気がします。薬さえ飲めば酷くはないのでそんなに悲観的な話ではないです。

実は大学院にいた頃も似たような状況で気持ちをやってしまい薬を飲んでいたので、自分の中での投薬ライン(この状態に陥ったら薬なしで離脱不可能、というライン)が割と明確になっていたことが幸いだったと思います。薬飲んでいます、と明言したの、そういえばこれが初めてだったかもしれないです。自分からこれを口にすることに特に抵抗はないのですが、まぁあんまり人に言うことじゃないのもまた事実なので。

こんな感じで、ネット回線引くのに大苦闘して、後半は自己実現に苦しみ気持ちをやっていた、というのが僕の2019年後半です。 フジロックに行ったり、全感覚祭に行ったりというのもあるのですが、このあたりはcllctv.の記事にしたので気になる方はそちらで補完してください。

そういえば、友人のバンドのMVに出演した、というのがありました。

タダ酒飲めると誘われて出演したんですが、友人大集合で楽しかったし、映像を作っていくプロの技をたくさん見ることができてかなりためになりました。

ちなみにこのMVは京王堀之内のライブハウス、time Tokyoというところで撮影されており、僕も色々ときっかけがありこのライブハウスでイベントを企画することになりました。つなぐべきは縁であることを実感します。この時くらいから、このバンド猫を堕ろすのコンポーザーである薫人とよく酒を飲むようになりました。日々の拘泥の中で、自分たちの居場所がなければいけない、自分が楽しい、と言える場所を作っていくためには、自分の生活の最小単位だけでなく、自分とつながる人間をできるだけ多く守っていかなければいけない。いつもこんな話題を酒を飲みながら議論していた気がします。これはいわゆるコミューンの思想だと思っていて、この思想を自分なりにライブイベントに落とし込んだのが、前述のライブイベント、Internal Meetingです。

2019年は、同居人との暮らしが始まり、大きく暮らしの在り方が変わったことを中心に、様々な事象が僕のメンタリティを波立たせた一年だったように思います。そんな波に振り回される中で醸成されてきた、「コミューン」の思想。これを頭の奥に据えながら、自分たちの自分たちらしさを作っていくための生き方を考えていく。2020年はそんな年にしたい、という感じで2019年の振り返りは結ばせていただきます。2020年、僕と楽しいことを企んでくれる友人各位、引き続きよろしくお願いします。

今回はバカ長い記事でしたが、今後はもう少しライトな日記をちょこちょこ投げていこうかと思うのでよろしくお願いします。