生存本能と挫折(線の話)

僕は今まで挫折を経験したことがない。 人生を振り返ってみると、人生の大きなイベントにおいて、自分に失敗はなかったように思う。高校受験では確か自己ベストに近い点数で志望校に通ったし、大学受験も、第一志望以外どこも受けず、しかも苦手だった二次試験すらパスして入ることができた。大学の中でも研究室選びで競争なく第一志望に入れ、そこで人にも恵まれ自分の名前が載った論文が世に出たし、就活においても第一志望の企業にしっかり合格し、今もそこで楽しく仕事をしている。

こう書くとさもバラ色な人生という感じもあり、我ながら恵まれた生き方をしてきたなと思うのだけど、ではそんな僕は常に成功者である、という気持ちを持ちながら日々生きていられるのかといえば、そうではない。 点に近い超短期的視点において、僕は常にネガティブであり、自虐的であり、何かに敗北している。点単位での自分の精神性を計測し、プロットしたら驚くほどにネガティブな精神性が浮き上がってくると思う。いまだに10年も15年も前の自分の恥ずかしい行動や言動を鮮明に思い出し、赤面し、動悸がする。いたってまっとうに後ろ向きな人間だと思う。生きづらめの人間の自覚がある。

それなのに挫折を経験したことがない、と言うのは矛盾しているようにも思えるかもしれない。でも実際に自分に挫折の記憶はない。なぜか。おそらくなのだけど、そこには、基本的に薄弱な精神を持っている自分=点が進む線が折れないための生存本能が強く働いており、それが僕の人生から挫折の可能性を極限まで消し去っているのだと思う。(これは持論だけど、「挫折」するのは心身ともにある程度健康で、性根が前向きな人間だけだと思う。)

ネガティブで感情的な点が死ぬまで進んでいくレール=線がガタガタだったら、マジで変なコケ方して死んでしまうので、点を大事に大事に運んであげるために、線はしっかり引かれている必要がある。つまり、点はともかく、線においてスベることは許されない。

なので、線=人生における僕の基本方針は、「負けない」になる。それすなわち、挫折しない。

そもそも、基本的に「勝ちたい」という欲求がない。いや、正しくは「勝つために努力するくらいなら、勝てなくていい」かもしれない。僕は非常に怠惰な人間で、なるべく人生必要以上のエネルギーをかけずに生きたいと思っている。努力が大嫌いだ。マジで。「勝つ」ためには「頑張る」必要があり、自分にとってそれを課すことと勝利の美酒に酔うことを天秤にかけた時、天秤が勝利に傾くことはない。だから他人と競い合うもので強くなることは基本的にない。

ただ、いろいろ人生において勝負しなければならない場面はある。僕は「勝ちたい」欲求はないのに、プライドはそれなりに高いので、負けず嫌いである。全くもって褒められた精神性ではない。なので、そういった勝負の場面での僕の考え方は基本的に「負けたくない」である。勝とうとする代わりに「負ける」ことのリスクが高まるのなら、「負けない」方法を探す。そして、「負けない」ためにエネルギーを使う。

つまり、自分の中で見通しの立った、最小の努力によって成し得る成功を目指す。そして、おそらくその成功を見極める能力が僕にはそれなりにあった。これはありがたい授かりもので、なので、その成功を手堅く得てきた。その結果が「挫折の経験がない」今の自分なのである。その見通しの立った成功が、たまたま、客観的に見たときに難しいとされている大学だったりしたので、なんとなく自分は成功した人のように思えたりもするが、根本的には負けていないだけだ。 僕に戦う意志があったとしたら、僕は自分の実力以上の場所に挑み、明確な挫折を経験したと思う。これは冒頭で語った全ての成功に関して、なるべく第三者的に考えてみた僕の所感。僕という脆弱な人間の生存本能は、僕の中から「挫折」の二文字を取り払った。

人の一生とは、生まれてから死ぬまで敷かれたレールそのものであり、それそのものに勝ち負けを求めるのは僕にとってあまりに恐ろしいことだ。レールが歪んだはずみに転げ落ちた時のリスクの高さが計り知れない。なので、手に届く範囲の最良を目指し続けることで、レールそのものの健全性を保っている。改めて言うけど、これは線の話である。

一つの道筋において、プロットされた点の連続が線となる。今日は、挫折無い人生としての線の話をしてみた。 途中で、点において僕は非常にネガティブだという話を入れた。また脳が整理できた時があったら、人生の点の話も書いてみようかと思う。線(人が生きていくために必要な人生の主軸)は人の生き死にに関わるので生存本能が働く。その結果、非常に平和なものとなった。

しかし、極端な話、線を構成する点ごとにおいて、自分がどうなっていようが、それが死に直結しない(僕の場合は)。なので、点において僕は非常に挫折しまくっている。あらゆるものに憧れ、それに「成れない」自分を思いゲボを吐いている。いつかまたその話をする時があれば。人生ってむずかしー。