MFT#014 金麦

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今撮ってみて気づいたけどちょっとデザイン変わった?

 

僕の大学生活の大半は、サークルでのバンド活動に捧げられていたと言って良いと思う。大学受験に際して、常日頃から両親に「大学は遊ぶところ」と聞かされしっかり遊んでこいと送り出された僕は、そんな両親の手厚いサポートを受けつつ6年間の大学生活を充実の上で修めることができた。

そんな僕の大学生活の主幹を占めていたサークルだが、バンドサークルとはいえサークルとしての活動は平均して2ヶ月に一回程度のライブ。運動会のサークルや部活のように毎日やることがあるわけではない。それでも、うちのサークルには毎週ほぼ必ずある行事があった。それが飲み会である。

 

世に聞かれるような大学のサークルの(しかもバンドサークルの)飲み会ともあれば、さぞかし凄惨なものを想像する人も多いかもしれないが、実際はその想像とは全然異なるものだった。

定例の部会が終わると、「今週の飲み会」の参加者を飲み会係が募り、それを率いてほぼ常連となる居酒屋に向かう。ある程度人が揃ったら、キリンのクラシックラガーの瓶が運ばれてきて、酒を飲みたい人はそれを飲む、飲まない人はノンアルコールの飲み物を頼むか、あるいはお金がなければ水と食事だけで済ませたりする。飲みたい人だけが勝手に飲み、そこで飲む人飲まない人問わず音楽の話を閉店まで延々とする。そして、閉店の際に会計が行われ、飲み食いした人間は2000円を払い退店、余力のある人やむしろそれをメインと捉え閉店の26時を待っていた人々が集まり、「大丸」へ向かう(大丸についてはいつかブログに書くかも)。

そういう実に牧歌的で自堕落、時に生産的な飲み会が日々行われていた。とはいえ、そこで供されるアルコールは基本的にクラシックラガーしかないので、それが苦痛だった人もいるかもしれないが…。このクラシックラガーを通じて、みんな当たり前のようにビールを飲むようになる。なので僕のいたサークルの関係者にはクラシックラガーに思い入れがある人が多い。僕もそうであるのだけど、僕にとってそれ以上に思い入れがあるのが金麦だった。

 

以前のブログでも書いたように、サークルの夏の最大のイベントは「夏合宿」と呼ばれる泊まり込みイベントで、そこは踏み入ったら最後、合宿を終えるまでビールしか飲むものがない空間である(もちろん、ビールを飲みたい人にとっては。お茶やビール以外の酒もある)。バスに大量の缶ビールを積み、着くや否や全ての部屋の冷蔵庫は缶ビールで埋まる。常に酒を飲んでいる人しかいないし、みんな最終日のライブに向けて抱え切れないほどのバンドを組みスタジオに入るので、24時間起きている限りは常に酩酊と音楽に囲まれる空間が生まれる。それはとても非日常的な高揚感があって、恥ずかしながら未だに戻りたいと思う体験だった。

常に酒が飲めるとはいえ、部費で賄われる酒代故、ちゃんとしたビールは数を買えない。そこでいわゆる発泡酒第三のビールが大量に買い込まれることになるのだが、そんな熱を帯びた空間において熱い支持を受けていたのが金麦だった。僕にとって、サークルの思い出の多くを占める合宿の中に、いつも映り込んでいるのが金麦なのだ。

そういえばサークルの同期のバンドが『金麦e.p.』という音源を作っていたな。僕に限らず金麦に特別な思いのある人は実は多かったのかもしれない。

 

金麦は他のジェネリックものに比べ、甘みと苦味が強く出ているように思う。僕は国産大手のビールは黒ラベルが一番好きなのだけど、近い傾向の味のように思う。あと、本物のビールよりサラっと飲める水感も高い評価の理由かもしれない。まぁそんな理屈があるのかは分からないけど、何かと思い出されるものがあるこの青と金のデザインにはなんとなく仲間意識が芽生え、未だにスーパーに行くと買ってしまう。稼げるようになってもまだビールは高級品だから、普段はこれくらいがちょうどいいなと思う。