MFT#003 セッコク(黄蝶)

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最近、いわゆる着生ランというものにハマり始めた。その名の通り、着生するランの総称である。着生というのは根っこなどを使って木の幹や岩肌などに張り付き暮らすことを言い、よく水のいらないインテリアプランツとして販売されているエアープランツ(ティランジアの仲間)や、最近同じくインテリアプランツとしてよく名前を聞くようになったビカクシダも着生植物である。

 

先の3月、東京ドームにてドーム蘭展という非常に大きな植物のイベントが開催された。僕はちょうどそれくらいの時期にティランジアにハマり始め、それらの植物の販売も多いと言われている当イベントに足を運んだわけである。

そこでいくつかティランジアやビカクシダを購入したのに加え、冒頭で述べた着生ランを購入した。Erycina pusillaという中南米原産の超小型の着生ランだ。その可憐な花と扇型に広がる草姿に惹かれ購入したのだが、すぐに花も終わってしまい、今は葉を見て楽しんでいる。

 

さて、そのような着生ランへの興味の土壌を養い始めたタイミングで、世はコロナウイルスの煽りを受けまくり、自分の仕事も在宅になった。ずっと家にいると、変化のない家の中が若干退屈に思えた。そこで、何か花を咲かせる植物を買おうと思い至った。香りも良ければなおのこといい。

そう思って楽天市場など徘徊していた時に見つけたのが、今日紹介するセッコクである。

 

セッコクはフウランと並び称される日本を代表する着生ランでDendrobium moniliformeという学名で知られる。デンドロビウムというのはランの大きなグループの一つである。人によってはガンダム0083に登場する「ガンダム試作3号機」に関する名称として聞いたことがあるかもしれない。(僕は未視聴。確か昔ケロロ軍曹ガンプラが出てきてその名前を知ったような)

いずれも見事な花と芳香を持ち、なおかつ着生ランに共通する特徴として、強健であることが挙げられる。僕の実家は山野草がたくさんあって、庭の柿の木には見事なセッコクが、松にはこれまた大株のフウランが物心つく前から着生しており、その開花を眺めるのが毎年の楽しみだった。

 

中学生ごろ山野草趣味のピークだった自分は根っからの国産種、原種主義者であり、そこら辺の花壇にある外国産の園芸品種の花々には全く興味を持てなかった。野生の魅力をもち、山々の緑に埋もれて咲く原種こそ美しいと思っていた。当時から偏屈な人間である。

なので今の僕が園芸品種のセッコクを愛でているのを、もし当時の僕が知ったら大層驚くだろうと思う。趣味とは変わっていく。

 

そもそもセッコクは基本白からピンクの花が多い。キバナノセッコクという近縁種は薄緑色の美しい花をつける一方で、幹が徒長しやすい印象で、株が雑然としてしまう。セッコクの魅力は花と同様に、しっかり締まった造りの株立ちにあると僕は思っていて、でも一方で緑花、黄花に対する憧れも強かった。

そんな両方の良さをいいとこ取りしたものに近い品種が、「黄蝶」だったわけである。ここまで目に映える黄色を固定するために続けられた改良のことを思うと頭が下がる。香りは同時期に購入したピンクの花の「雷山」に比べると弱いものの、株に溢れんばかりに咲くとそれなりに香る。

仕事を始める前に目の前の窓を少し開けて、その風にセッコクの香りが乗ってくると、なんとも贅沢な気分に浸ることができる。

 

一株2000-3000円で買え、ある程度の日光と風通し(着生ランにはこれが一番大事)を確保できるところであれば栽培は難しくないと思う。

今の時期は花芽付きのものが買えると思うので、是非購入して単調になりがちなStay homeの日々に豊かさをもたらしてみてほしい。